2017-04-08

EU:「FOREVER FASTER」スローガン商標の挑戦 - Novagraaf

スローガン、フレーズ、タグラインは、企業がブランド・アイデンティティを構築する上で役に立つものだ。しかし、EU第一審裁判所(General Court)による最近の判決のように、スローガンを権利化するための商標出願は成功するとは限らない。「FOREVER FASTER」というスローガンは、スポーツウェアやスポーツ用品の商標として、充分な識別力を持たないと判じられた。NovagraafのFrouke Hekkerは判決について以下のように説明する。

適切に使用されているかぎり、スローガンは企業が消費者に直ちに認識されるブランド・アイデンティティを構築するのに役立つものだ。Nike(ナイキ)の「Just Do It」とMcDonalds(マクドナルド)の「I’m lovin’ it」は、その例であろう。しかし、この種のマーケティング用タグラインがブランド・アイデンティティの確立と成功に重要であるとしても、この創造性の権利を登録するための特別な知財制度はないので、ブランド・オーナーは、商標法や著作権法を駆使して権利保護と権利行使を実施する必要がある。

商標登録の要件: フレーズやスローガンを商標として登録するためには、商標登録のための通常の基準を満たす必要がある。

  • 指定した商品・役務区分で登録が可能であること。つまり、同一管轄区域で同一または類似する商品・役務区分に、同一または類似するスローガンが、既に登録されていないこと。
  • 「記述的」でないこと:商標が商品や役務自身を記述的に示しただけのものや、その特性を説明的に示しただけのものは、商標登録官によって拒絶される可能性が高い。
  • 「識別力」があること:使用される表現に識別力があればあるほど、商標登録官によって商標登録を受ける可能性が高くなる。

このなかで、商標としてスローガンを登録しようとするブランド・オーナーにとって、しばしば最大の障害となるのは、「識別力」の要件である。多くのスローガンは商標法の観点からは記述的であるとみなされ、出願しても商標として登録するには充分な識別力を持たないとみなされることが多い。したがって、スローガンが使用により「識別力を獲得する」ことで、商標登録の可能性が高まる。登録例としては、ドイツの自動車メーカー、アウディが使用している「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」がある。欧州の最高裁判所にあたる欧州司法裁判所(European Court of Justice)は2010年の判決で、スローガンが特定の独創性と余韻をもたらすのであれば、そのスローガンは商標として機能すると判じた。スローガンが商標として登録されれば、その権利者は他の企業が同様の商品や役務に、類似するスローガンを使用することを禁止することができる。

「FOREVER FASTER」の場合: 2013年12月に、有名なスポーツブランド、プーマの商標所有者は、履物とスポーツ用品等を指定商品として、スローガン「FOREVER FASTER」を権利化するために、EUTM(欧州連合商標)の商標出願を行った。これに対して、EUIPO(欧州連合知的財産庁)は、このスローガン商標の登録を拒絶し、EU第一審裁判所も先月このEUIPOの査定を支持した。第一審裁判所は、スローガン「FOREVER FASTER」を、関連する公衆が「単なる販促用の常とう句」として認識するため、商標法上の識別性要件を満たしているとはいえないとし、さらに、「FOREVER」と「FASTER」という文字は標準的な英単語であり、「FASTER」は当該スローガン商標の指定商品と直接的に関連しており、関連する消費者は、より早く(faster)動き、より効果的に競争するために(運動)靴やスポーツ用品を購入する。裁判所はまた、当該スローガンが識別性を獲得するには、充分な想像力に欠けており、意外性がないと判じた。

著作権オプション:特定のフレーズやタグラインは、「十分なオリジナリティ」や「独自の特徴」を備えていれば、著作権保護の対象となる。しかし実際には、これらの基準を容易に証明できるとは限らず、裁判所が個々のケースでスローガンに著作権保護を与えるかどうかを判断することになる。商標制度や著作権制度が適用されない場合でも、英国ではパッシングオフ(詐称通用)のような模倣や侵害で、登録しなくてよい知的財産権を行使することもできる。

本文は こちら (Forever faster, and the challenge of protecting slogans as trademarks)