株式会社ユニクロに関わる「UL」商標権侵害訴訟事件が北京裁判所の「2015年度知的財産権十大創新性事例」、最高裁判所の「2016年度中国裁判所典型的知的財産権事例」、上海裁判所の「2016年度10大知的財産権事件」に前後して選出されたことに続き、同事件に関わる「UL」商標無効審判の審決取消訴訟事件も「北京知識産権法院の悪意的商標登録を規制した典型的事例」に選出された。
「A社」はある大手商標譲渡ウェブサイトの事業者であり、第25類の「服装、靴、帽子」等の商品について「UL」中国登録商標の専用権を取得した。A社は株式会社ユニクロ(中国語名称:優衣庫)が製造、販売したある服飾製品に「UL」商標を使用したことを理由に、2013年年末から現在に至るまで、中国全国にわたる42の人民法院(裁判所)に商標権侵害で株式会社ユニクロを訴えた。
この42の人民法院が下した判決には3種類あり、1、商標は類似しておらず、侵害に該当しないという北京知識産権法院(知的財産裁判所)による判決、2、商標は類似しているが、侵害に該当しないという上海知識産権法院による判決、及び3、商標は類似しており、侵害に該当するという深圳市中級人民法院による判決である。これらの事件はいずれも第一審と第二審を経て、現在は再審手続が行われている。
商標権侵害訴訟の過程において、株式会社ユニクロは、調査により、A社が事業範囲を超えて、使用目的以外の目的で係争商標を含む登録商標を2,000件余り大量に出願してストックし、また、商標譲渡、悪意の訴訟などの手段を通じて商標による利益をむさぼっていることを発見したため、中国国家工商総局商標評審委員会に商標登録無効審判を請求した。商標評審委員会が係争商標を維持するという裁定を下した後、株式会社ユニクロは北京知識産権法院に、商標評審委員会による商標登録無効審判の審決を取り消すための審決取消訴訟を提起した。北京知識産権法院は最終的に、A社が商標をストックして利益をむさぼる行為は「その他の不正手段」で登録商標を取得する行為に該当すると認定したため、係争の商標登録を無効とするという判決を下した。
本件の判決は、悪意を持って登録商標をストックし、かつ全国で大量の訴訟を提起して多重賠償を獲得しようとする誠実ではない行為を防止するという人民法院の意向を示しており、知的財産権を利用して提起された悪意の訴訟事件を如何に処理するかについて、司法の良好な指導的作用となった。
Authors: Watson & Band Law Offices