先月EUの一般裁判所(General Court)は、中国の事業会社Antaが出願した商標に対して、欧州連合知的財産庁(EUIPO)の判断を支持する判決を下した。EUIPOは、出願商標は商標として機能するための図形というより単純な装飾要素であるとして商標出願を拒絶した。ブランド名やロゴ・マークは、商標登録を可能にする特定の基準を満たしていなければならない。商標は、商標を付した自己の商品・役務と、他人の商品・役務とを関連する公衆が明確に区別できる「識別力」のある特徴を備えていなければならない。EUの一般裁判所は、この裁判で単純な幾何形状が図形商標として機能するかどうかを検討したが、関連する公衆が標識を単なる装飾と認識するため機能しないとの結論に達した。
判決の背景:
Anta社は、18、25、28クラス(革製品、衣類、スポーツ用品)を指定して、EUTM(欧州連合商標)出願を行った(右図形)。審査後EUIPOは出願を拒絶し、審判部がその決定を支持した。Anta社はEUIPOの以下の判断を確認するため、EUの一般裁判所に上訴した
- 商標により保護が求められた製品は一般消費財である
- 一般消費財の消費者は、欧州の平均的消費者よりも高い注意力を持っていない
- 出願商標は、一般的な幾何図形(円や三角形など)ではないが、目を引くもの、記憶に残るもの、認識できるものとはみなされない
- 出願商標は、装飾的な目的で衣服に使用される他の組合せラインを想起させる可能性のある単純な2つのラインの結合として認識される
- そのため、関連する消費者はその商標を装飾的な要素として認識する
- したがって、出願商標には識別する特徴がなく、商標保護の対象にはならない
識別力の制約を克服する:
標章が最初から商標として登録することが不適当である判断された場合でも、将来使用によって識別力を獲得すれば商標保護の対象にできる可能性は残っている。「獲得する識別力」は、商標が長期間または集中的に使用されて広く認識されるようになれば、言い換えれば、標識が識別記号(商標)として機能し始まれば、商標登録を申請できる。不十分な識別力しか持たない標章は、文字と図形要素の結合標章のように識別力のある要素と組み合わせることによって識別力を強化することができる。ただし、その結果得られる商標権は、個々の要素ではなく商標全体である。
事前調査には使用可能性調査も重要:
標章の識別力は主観的に評価されることが多い。しかし、事前に新ブランドの記述性や識別性を検討して、その商標登録の可能性を調べることはできる。それに、新ブランドを発表する前に、その標章が使用可能であることを確認することも大変重要だ。
本文は こちら (Simple geometric shapes not eligible for trademark protection)