スイスの時計メーカー、ロンジンは、翼のある独特のブランド・ロゴで有名だが、時計ブランドとしての商標の独占権は非常に重要である。だから第三者が欧州で時計を含む商品を指定して商標出願したロゴ(下図)は面白くなかった。
ロンジンは出願商標に対して異議を申立てた。申立て理由は、出願されたロゴがロンジンの名声にただ乗りするためにロンジンのロゴを変形したもので、ロンジンのロゴと混同を生じさせるとして、欧州連合共同体商標に関する理事会規則第8条第5項(後願商標が先の商標の識別性若しくは名声を不正に利用し又は害することになる場合は、登録されないものとする)に基づくものだった。
ロンジンは、ブランドが著名であったとしても多くの困難を伴うロゴの名声について証明しなければならなかったが、EUIPO(欧州連合知的財産庁)はロゴだけの著名性を認めず、異議を棄却した。
両者のロゴには要部に違いがあり類似しないとEUIPOに判断されたことは、ロンジンにとって事態を一層悪くした。異議が棄却されたため、後願ロゴによってロンジンのロゴ商標が希釈化されると考えるのは十分妥当であり、この希釈化に対抗するのは極めて困難となった。