ドイツのストーク社(Storck)の菓子ブランドKnoppers(クノッパース)のパッケージに関する最近の判決は、立体形状の商標登録の難しさを改めて証明することになった。欧州司法裁判所は、クノッパースのパッケージに識別力がないとの下級裁判所の決定を維持した。
パッケージデザインは、味、価格、品質と同じように購買意思決定に大きな影響を与え、菓子製品の成功には欠かせない役割を担っている。しかし、だからと言って必ずしも容易に商標保護が与えられるわけではない。
立体商標の保護と特徴:拒絶理由は、商品の機能特性や技術的な必要性を企業の独占から守るためとされた。このように形状(および特性)を独占から守るために、EUTM(欧州連合商標)には次の3つの拒絶理由が規定されている。これらの規定に適う形状や(色や音など)他の特徴は商標保護の対象とはならない。
- 商品そのものの性質から生じる形状
- 商品に本質的価値を与える形状
- 技術的成果を得るために必要な商品の形状
これら3つの拒絶理由に当てはまらない形状は商標保護の対象となる。但し一般論としては識別力があればという条件が付く。実際に、特定の事業における識別力のある商標として消費者が形状を認識するかどうかは難しい問題であり、ハードルはかなり高い。商標登録を求める形状は、商品として使用したいと思う形状に近づければ近づけるほど識別性が欠如する傾向が強くなると言われる。理想的には、商標が本来持つ出所表示機能を満たすためには、形状が需要者のいる区域の慣習や基準から全く離れたものである必要がある。
クノッパースはその問題を克服できたか?
今月、欧州司法裁判所(CJEU)は、クノッパースのパッケージ(右図)の商標出願に関しての興味深い判断を下した。EUIPOの審査官は、指定する商品(お菓子やチョコレートを含む製品)に対する識別力が欠けているとして絶対的拒絶理由を根拠にその商標登録を拒絶した。EU審判部(BoA)も一般裁判所(General Court)もその決定を維持した。
EU審判部は、EUにおける平均的な消費者にとって、この種の商品に対する注意力は低いものだとの認識を示し、当該パッケージの外観は、典型的なお菓子のパッケージとして普通に思い描けるイメージで構成されており、出願人は使用を通して識別性を獲得したことを証明することはできなかったと判じた。
控訴審で一般裁判所はEU審判部の決定を維持し、さらにクノッパースのパッケージに使用されている淡い青、白、グレーの色の組合せが、ある事業分野の商品の出所表示として機能することはなく、他の事業分野の商品と識別する機能を持たない。この色の組合せは普通に使われるものだとし、消費者はこのパッケージを見て、シンプルな装飾的パターンであると認識するため、出所表示として機能しないと判じた。パッケージ上のグラフィック要素が、青い空を背景に雪に覆われた丘を表しているという主張も認めなかった。
欧州司法裁判所の判断:控訴審で欧州司法裁判所もまた審査官の決定を維持した。興味深いのは、欧州司法裁判所が、立体商標の識別力の問題に採用する判例をクノッパースの二次元パッケージに適用するという一般裁判所の判断を追認したことだ。これは、文字や図形商標に反して立体商標に当てはまるもので、立体商標が指定する商品の外観と無関係な標識から成っていない図形的要素を取り入れていても、消費者は心の中で装飾的な構成だと認識すれば、指定する商品の外観と無関係な標識からなる文字や図形標章を基準に評価することはない。つまり、クノッパース・パッケージは識別力を欠いていると考えられ、商標として登録できないということだ。
登録戦略:このような場合には商標の一部ではなく全体を権利化するのであろう。他方で、そのような登録によって、第三者が登録可能性サーチを行っている間、注意が当該商標に向くという予防的な機能が期待できる。とはいえ、商標としての記述的要素に識別力のない要素を加えても有効ではない。
本文は こちら (Is 3D packaging eligible for trademark protection?)