2017-07-24

ドメイン紛争:スポーツブランドのヴォルコム、商標権者の勝利 - Novagraaf

もしブランド名の全部または一部を組み込んだドメイン名を登録して、確立されたブランド力にただ乗りして利益を得ようとしている第三者を発見したら、どのように対処したらよいのだろうか。商標権者には、そのようなドメイン名登録に対抗するために、統一ドメイン名紛争処理方針(UDRP)などのドメイン名紛争処理手続がある。米国のスポーツ・ファッションブランドVOLCOM(ヴォルコム)は、最近のドメイン名紛争で迅速かつ比較的安価な解決策を見つけ出した。

トップレベルドメイン(TLD)数が増えるにつれて、ブランド・オーナーにとって、巨大化するドメイン名ポートフォリオを管理し、オンライン上でブランドや商標権の侵害を監視することが、ますます困難になってきている。利用可能なすべてのTLDを取得することは、ビジネス的にも防衛的にも実行可能な戦略とはいえないが、登録しないTLDがることで、潜在的な侵害、ブランドの希薄化、収益の喪失の扉を開いてしまうことにもなりえる。

利用可能な解決策
幸運なことに、UDRPなどのドメイン名紛争処理手続は、問題が発生したときに、ブランド・オーナーに費用対効果の高い解決手段を提供するためのものだが、これらの手続の恩恵を受けるには、適切な商標権がなくてはならない。また、ドメイン名の所有権を主張する法的根拠も必要である。ドメイン名の登録は先着順に行われるが、たまたま名称やブランド名が同一又は類似している(異なる分野の商品・サービスを提供する)会社が先に同一又は類似するドメイン名を取得することはありえることだ。

悪意のあるドメイン名登録を見つけた場合、選択できる解決手順はトップレベルドメインの種類に依存する。例えば .com、.info、.net、.orgの場合は、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)のUDRPが該当する。この紛争処理手続きを利用するためには、以下の要件を満たす必要がある。

  • ドメイン名は、商標権者の商標と同一または極めて類似する
  • ドメイン名の所有者は、当該ドメイン名に関する正当な権利を有していない
  • ドメイン名が不正に登録され、使用されている

侵害の基準
商標権者のサービスプロバイダーやディーラー/リセラー、ディストリビューターによるドメイン名の登録を含む紛争については、世界知的財産所有権(World Intellectual Property Organization(WIPO))仲裁調停センター(Arbitration and Mediation Center)で2001年に起こったOKI DATA(沖データ)の裁定が有名だ。この裁定では、以下の場合、ドメイン名に使用されている商標が善意の使用(ドメイン名登録が悪意のあるものではない)であると判断された。

  • ウェブサイトで商標権者の商標を付した商品を販売している
  • 競合他社の商品がその特定サイトで提供されていない。商標が競合商品を提供するためのオトリとして利用されていない
  • ウェブサイトに商標権者との関係を正確に表示している
  • ドメイン名の所有者は、商標権者に関連するすべてのドメイン名を登録していない。そのため、商標権者から関連するドメイン名の登録機会を奪っていない

OKI DATAの裁定で示された包括的な原理から判断すると、ドメイン名が示すウェブサイトと商標または商標権者の間の関係性を暗示させるようなものである場合、ドメイン名の使用は悪意のあるということになる。

ヴォルコム(VOLCOM)の紛争
OKI DATAの裁定基準が適用されている例は、「volcomsuomi.com」と「volcomnorge.com」の2つのドメイン名に関する最近の裁定に見ることができる。これらのドメイン名は、ヴォルコム・ブランドの2つの販売業者と再販業者によって登録された。「Suomi」はフィンランド語の地理的名称であり、「Norge」はノルウェー語ではノルウェー国のことだ。商標「VOLCOM」の所有者は、1990年以来米国と欧州連合(EU)で、文字商標「VOLCOM」と、以下の図形商標を主に衣類(商標区分25類)を指定して商標登録している:

「volcomsuomi.com」と「volcomnorge.com」のドメイン名所有者は、ヴォルコム製品が販売されたウェブサイトで以下のロゴを使用していた。

2017年7月3日にWIPO仲裁調停センターは以下の裁定を下した:2つのドメイン名の登録は、ヴォルコム商標と混同しやすい。この登録はドメイン名に関する正当な権利を有したものではない。これらのドメイン名は不正に登録、使用されたものである。よって、ヴォルコムの申立てを認め、2つのドメイン名の登録は取消された。

OKI DATAの判断基準はこの裁定においても慎重に審査され、その基準の下で、当該ウェブサイトに有名なヴォルコム商標を表示することでウェブサイトと商標権者との関連性を強調し、誤った印象を与えたことが裁定の重要なポイントであった。

本文は こちら (Domain name victory for sports brand Volcom)