現在、ロシアでは標章に法的保護を与えるために、商標の登録要件として2つの主な根拠、絶対的拒絶理由と相対的拒絶理由が審査される。この制度は商標制度創設時から変わっていないが、最近では、制度の改善の観点から、既存の審査制度が見直され始めている。
非公式異議申立
ロシア民法1493条第1項は、「何人も,商標出願に関するロシア連邦知的財産特許商標庁(Rospatent)に提出した後,出願書類を閲覧する権利を有し、Rospatentは商標について提出された出願に関する情報をその公報において公告する。出願に関する情報の公告の後かつ商標の国家登録に関する決定が下されるまでに、何人も、出願商標における本法第 1477 条及び第 1483 条の要件の不遵守に関する主張を記載した申立書をRospatentに提出する権利を有する。」と定めている。
これは、出願商標が法的保護を受けることができない原因と理由を明記する書面を提出することによって、第三者が異議申立てをする機会が与えられていることを意味する。原因と理由には、例えば類似する商品やサービスを指定した類似商標の登録があるとか、優先権のある類似商標の出願があるとか、他人の持つ先行権利が含まれる。この場合、重要なのは申請人が異議の見解を申立てる書面で法的な利害関係を証明する必要がないことだ。
見解を申立てる書面で提供された情報は、オフィス・アクション前の審査期間中に審査官によって検討される。先行権利を保有している者の意見は、審査官が類似する商標を誤って登録させる可能性を減少させることに通じ、審査の質を確実に向上させるものとなる。そのような見解は、しばしば商号や著作権に関連する先行権利の情報に基づいていることにも留意すべきである。ただし、商標出願の実体審査では、審査段階での権利についての審査は行われておらず、申請者が対象商標の登録を拒絶すべき理由について申請者の主張をどのように記載しているかが重要となる。商号や著作権の先行権利に関する審査が出願段階で行われていないにもかかわらず、そのような情報によって、商品の製造者やサービスの提供者に関して消費者の誤解を招く可能性として示すこともできる。この拒絶理由は、実体審査の中で検討される、審査官がそのような情報を受け入れる可能性は低くない。
但し、Rospatentは異議に対応する義務はなく、出願人に異議が申し立てられたことを通知する義務もない。しかし、通常Rospatentは、申立て書の理由を考慮し、適用法を検討する旨を申立人に通知する。また、Rospatentは出願商標に対して異議申立書が提出された旨を出願人に通知する。出願人は申立書のコピーを請求することもでき、適切だと認められれば、出願人は異議申立て根拠に対する意見を述べることもできる。
ロシアには、このような非公式な異議申立制度が存在し、経験上多くの場合、異議申立ては審査官によって考慮され、極めて類似する商標や出所表示で消費者に誤解を与えるような商標の登録防止に役立っている。
このような非公式な異議申立ての機会はあるが、Rospatentは、ロシアの法律に異議申立手続きを導入するよう取り組んでいる。Rospatentによると、異議申立手続を現行の法律に導入することにより、商標登録の条件を減らすことが可能になるという。2016年6月に、Rospatentはパブリックコメントを求めて異議申立て案を作成した。
本文は こちら (THE EXISTING TRADEMARK OPPOSITION OPPORTUNITIES IN RUSSIA)