ある種の音楽は、人々の心に永続的な影響を与え、ソーシャルメディアでは「口コミ」や「トレンド」となって人々に伝わる。それらの代表例は「江南スタイル(カンナム・スタイル)」や「Kolaveri Di」であろう。これらの曲は人気を得ると曲のタイトルから歌手が思い浮かぶ。このような理由から、「江南スタイル」と「Kolaveri Di」という標章は、第三者の悪用を避けるために商標登録されている。
曲名を商標として登録する理由の1つは、曲名が著作権で保護されないからだが、さらに、最近、様々なテレビ番組や映画が、T.V.ショーや映画の名前として既存の曲名を使用することからでもある。2007年、米国のロックバンド「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」は、彼らの人気アルバムのタイトルと同名のショー「カリフォルニケイション – Californication」を制作するショウタイム・ネットワークス(Showtime Networks Inc.)に対して訴訟を提起し、ショウタイム・ネットワークスは出願商標(出願番号:77152641)を放棄した。同様に、2017年5月、米国のロックバンド「イーグルス(Eagles)」は、メキシコのHotel California Baja LLCとの間で、イーグルスのヒット曲「ホテル・カリフォルニア(Hotel California)」を巡って訴訟問題になった。イーグルスは、裁判でメキシコのホテルがイーグルスの名前やアルバム「ホテル・カリフォルニア」のカバーアートを利用してTシャツ、ポスター、スウェット、バスローブ、マグカップ、ギターピックなどの商品を積極的に販売しており、ホテル側のそのような行為は、イーグルスのヒット曲を利用してイーグルスとの関係を人々に信じ込ませようとしていると主張している。現在この訴訟はロサンゼルス連邦地方裁判所で係属中だ。
インドでは、伝説的作曲家A.R.ラーマンの弁護士が、「Jai Ho」を映画のタイトルとして使用したインドのSohail Khan Productionsに対して「Jai Ho」という標章の使用中止通告書を送った。Sohail Khan Productionsは、「Jai Ho」がアカデミー賞歌曲賞とグラミー賞の映画部門最優秀歌曲賞を受賞した作曲家の人気曲と偶然同じになっただけだと主張した。この問題はのちに解決され、映画「Jai Ho」はリースされた。
これらの事例は、曲のタイトルに著作権保護が与えられなくても、商標権で強力な保護が得られることを明確に示している。場合によっては、特定の曲が特定の映画や特定のバンドにだけに関連付けられることは事実である。しかし、曲名の商標出願時に考慮すべき重要なことは、登録後にその曲名の使用しそれを証明できなくてならないことだ。インド商標法は、商標登録後5年間に商業目的でその商標を使用しないと商標権が取り消されると規定している。第二に、「Jai Ho」など特定の曲が普及したとしても、ラーマン氏だけに「Jai Ho」という言葉の権利があるとはいえない。ヒンディー語でも同様な文字はある。