「SWEAT STOPPER (汗止め)」ブランドを保護するために図形化した韓国企業の目論見はEUIPO(欧州連合知的財産庁)の前で露と消えた。EUIPOは識別力の欠如を根拠として商標登録を拒絶した。出願商標(右図)は指定区分25類、指定商品「汗止めヘアバンド、汗取りストッキング、汗取りインナー、汗取り靴下、ヘアバンド(服)」であったため、それらの商品は商標を構成する文字の記述的性質を表すもので識別力を欠いていると判じた。
識別力の要件
ブランド名やロゴは商標として登録をするために一定の基準を満たす必要がある。特に、商標には関連する公衆がその商標を付した商品やサービスと他の企業の商品やサービスとを区別するための識別力がなくてはならない。標章がこの要件を満たしていない場合、商標登録が拒絶されるか、商標権が付与されている場合は潜在的に取り消される可能性がある。
保護を求める文字要素(要部)が対象の商品・役務を記述的に表したものであれば識別性の要件を満たさない。つまり識別力を判断する場合、出願商標が指定する商品・役務が何かが重要となる。
「SWEAT STOPPER」の敗因
今回の事例で、EUIPOの審査官は「SWEAT STOPPER」について単語の記述性と標章の図形要素が殆どなく識別力のある標識とはいえないことを理由に審査官によって商標登録を拒絶した。
EUIPO審判部(BoA)は審査官の判断を支持した。標識が記述的且つ識別力がないという商標法上の規定により登録が拒絶されたと説明している。また、「Sweat(汗)」と「Stopper(止め)」は、関連する公衆が「汗や発汗を止めたり、無くしたりするもの」を想起させる普通の言葉であり、指定商品は一般的な公衆向けであり、高い意識を持たない平均的な消費者を対象にしている、とも指摘した。その標識は「魅力的かつ風変わりな言語表現で独創的なものだ」という出願人の主張は棄却された。図形的要素にしても、非常に標準的なフォントが使われているので、独創性があるとは考えられない。
一般に、標識は要素が記述的であり且つ識別力がない場合であっても、全体的に識別力を持つ印象を生成すれば、識別力であるとみなされることがある。しかし、審判部は「SWEAT STOPPER」標章には当てはまらないと判断した。
識別力は克服できるか?
識別力がないため商標として登録することができない標識だと思っても、使用によって獲得した識別性を示すことで、商標保護の対象となる可能性がある。商標を長期間また集中的に使用し広く認識されている場合は、「識別力を獲得」することができる。言い換えれば、標識は識別標識として、つまり商標として機能し始めたことになる。
また、限定的な識別性を有する標識は、幾つかの要素を組み合わせる(文字と図形の結合標識)ことで識別力を強化することができる。但し、その場合得られる権利は、商標の個々の要素ではなく、商標全体であることに注意すべきであろう。