2017-10-17

EU:文字商標「BREXIT」はなぜEUで登録できたか - Novagraaf

欧州委員会は、本年9月にBrexit後の知的財産権に関する論文を発表し、英国がEUから離脱した後のEUの統一的知的財産権についての考え方を示した。しかし、これは知財関係者が関心を持ったBrexitに関する唯一の問題ではなかった。欧州連合知的財産庁(EUIPO)が、「BREXIT」という文字自体が商標の対象となるかどうかという審決で肯定的な判断を示したことも知財関係者の関心を呼んだ。

「BREXIT」の商標出願は2016年にさかのぼる。栄養補助食品やビタミン飲料を含む5類とエネルギー飲料、ビール、果物・野菜ジュースの32類、(電子)タバコの34類を指定したものであった。EUIPOは、EU商標規則(EUTMR)第7条(1)(b)「識別性を欠く商標」および(f)「公共政策又は一般に是認された道徳規範に反する商標」という絶対的拒絶理由を根拠に「BREXIT」商標の登録を拒絶した。 

EUIPO審査官の見解では、「BREXIT」は近代ヨーロッパの歴史上の重大事として広く議論されおり、欧州の市民にあまりにも知られている言葉でもあるため、商標保護の対象にはならない(識別性の欠如)というものであった。また加えて、特にエネルギードリンクや(電子)タバコなどの製品に「BREXIT」が商標登録されれば、人々を不快にさせる可能性があるとも指摘した。審査官は、欧州連合(EU)に留まることを支持した英国人が48%いることも参考にした。

公共政策と道徳規範の問題
その後出願人は審判請求を行った。EUIPO審判部は、「商標が出願された日に社会に浸透している思想が背景にあり、許容された道徳規範の原則に直接反する場合、商標は不道徳なものとみなされうる」と説明したが、本事例で、審判部は「BREXIT」という文字自体に道徳的な意味はなく、すべて法的要件に準拠した政治的なものだとした。また、「BREXIT」商標の拒絶は、欧州連合基本権憲章第11条と人権および基本的自由の保護に関するヨーロッパ条約第10条によって定められた表現の自由の基本的権利に違反すると考えられ、基本的権利の制限は、法律で定められていなければならず、民主的な社会において必要であり、一般的な利益と一致しなければならない。上記に照らして、審判部は「BREXIT」という言葉は不道徳とはみなされないと判じた。

この決定において、審判部は「BREXIT THE MUSICAL」や「English Brexit Tea」など既に英国で登録された幾つかの「BREXIT」関連商標を参照した。もし「BREXIT」という言葉が公共政策や道徳規範に反しているというなら、これらの商標登録はおかしいということになる。「BREXIT」の影響は他の地域と比較して英国では特に熟考されたはずだからだ。

識別力のハードル
商標保護を得るためには、標識が商品やサービスの出所表示として機能しなければならない。それによって関連する公衆が他の事業の商品やサービスと区別できなくてはならないからだ。「BREXIT」という文字がこの基準を満たしているかどうかを検討したときに、審判部は、「BREXIT」という言葉は称賛(laudatory)でもなく、「英国で作られた」というスローガンのような決まり文句でもない。一方、「Britain(英国)」と「Exit(出口)」という言葉に遊び心があり、記憶に残る、空想的な言葉の組み合わせであるとし、「消費者に好意的で意外な印象を与える」と判じた。つまり、審判部は識別力があると判断し登録となった。結果的に審判請求は成功であった。

本文は こちら (‘BREXIT’ passes EU trademark test)