ソウル中央地方法院は、韓国で有名なミネラルウォーターの「サムダス」のパッケージと文字の部分は異なるが全体的なイメージを模倣した行為に対し、不正競争防止法上の商品・営業出処誤認混同行為に該当すると説示した。(ソウル中央地方法院2017.9.4言渡し2017カ合80606決定)。
事実関係
債権者は1998年に水源地が済州(チェジュ)である「サムダス」というミネラルウォーターを発売し、商品の標章は「サムダス(삼다수)」という文字以外に空と山が図案化されている。債務者は「ハンラス(한라水, Hallasu)」という文字と空と山の図案を含む標章5点をミネラルウォーターに使用し、これに対し債権者は不正競争防止法上の商品・営業出処誤認混同行為などに該当することを根拠に使用差止め仮処分を申立てた。
法院の判断
法院は債権者の「サムダス」ミネラルウォーターは市場占有率が1位で、2007年から国家競争力ブランド指数ミネラルウォーター部門の1位である点などに照らして、債権者標章が国内で広く知られていることを認めた。さらに、本件のように標章が図形、模様、文字、記号、色などの様々な要素から成り立った場合の類似判断は標章を恣意的に分けて、その一部にだけ焦点を合わせるのでなく、商品の出処を表示することに寄与している全ての資料を考慮してその標章が需要者ないし取引者に与える印象、記憶、連想などを総合的に観察、比較する「全体的観察」が必要だと説示しながら、下記のように類似如何を判断した。
- 債務者標章1~4について
- 両標章は共に上段を青色の背景にして青い空を現わし、左側の下に黄色と緑で表現した火山の噴火口があり、色や図形の全体的な配置が類似している点
- 両標章は赤色で「チェジュ(제주)」を斜体で記載して、その下に青色で「サムダス」または「ハンラス」という単語を相対的に大きく記載した点
- 「サムダス」または「ハンラス」の周りに白色の楕円形を描いた点
- 両標章の下段に帯状に緑色を配置し、その部分に水源地名を記載した点
- 両標章は共にミネラルウォーターに使用され、両商品共に水源地が済州(チェジュ)である点
- 債務者実施標章1~4が表示された債務者商品が販売される時、債権者の商品の「サムダス」という単語が検索キーワードに一緒に出てきて、一部需要者が債務者の商品を債権者の商品として誤認した点
これらを総合的に考慮すれば、債務者標章1から4は債権者の標章と類似しており、債権者の出処として誤認、混同を起こすおそれがあると見た。その結果、債務者標章1から4の使用差止め仮処分の申立は認められた。
- 債務者標章5について
債務者標章5の左側の下段に位置した山の色と「チェジュ(제주)」部分の色が債権者標章と異なり、両標章は全体的な外観はだけでなく呼称、観念も異なるので、誤認、混同の憂慮がないと判断し、これに対する使用差止め仮処分の申立は不認定とした。
コメント
不正競争防止法上の出処の誤認混同行為に該当するかどうかの判断は、商標法上の登録要件を判断する時とは異なり、具体的な取引実情を考慮して判断するという点で差がある。本件では標章の類似判断時、最も重要視する呼称が全く異なるにもかかわらず、標章を構成する色及び図案配置が共通しているため全体的なイメージ(トレードドレス)が似ており、需要者の間でも実際に誤認、混同があった点を考慮して両標章が類似していると判断した点は注目するに値する。商品の全体的なイメージ(トレードドレス)を模倣した事案として、不正競争防止法を通した積極的な権利行使が可能なものと期待される。
(弁理士 徐蓮珠)