商標登録後5年が経過したら、EUの商標所有者は、その商標が登録されている商品やサービスのそれぞれで商標が(真正に)使用されていることを示すことができなければならない。さもないと、商標の取消しに対して脆弱になる可能性がでてくる。しかし、「もし、商標が登録されているものとは別の形態で使用されている場合はどうなるのだろうか? 真正な使用についてNovagraafのFrouke Hekkerが説明する。
「真正な使用」の要件
欧州連合(CJEU)の司法裁判所によれば、商標が登録されたものと同じ形態で、外見上商品やサービスの出所表示として使用されていることを示す事実や状況であるときは、真正な使用の要件を満たしているとみなすことができるとしている。
これには、関連する商品やサービスの特徴、市場の特性やその使用範囲と頻度により、商品やサービスの市場シェアを維持または創出する経済分野における使用が含まれる。使用は「実際に、十分」でなければならず、確かな客観的証拠によって実証されなければならない。また、商標が使用された期間や使用頻度と同様に、全体的に使用された商業的ボリュームなどを考慮する必要がある。
商標が登録されているものと別の形態で使用されている場合はどうなるか?
欧州連合商標規則(EUTMR)では、登録された形態と異なる形態で商標が使われていても、商標の識別力のある要素が変わっていなければ、真正な使用であるとしている。したがって、図形商標(の要素)がわずかに変わっていても一般的には容認される。
使用要件が満たされないとどうなるか?
真正な使用の条件を満たさない商標は、登録後5年間に指定された商品またはサービスごとに真正な使用をしていないと指摘された場合、商標の一部またはすべてが取消されることになる。不使用取消しで使用を証明する時間は限られているため、商標の使用を継続的に文書化しておくことは非常に重要である。すなわち、(日付入りの)パッケージや、ラベル、価格表、カタログ、請求書、写真、新聞などのメディア広告やブランドに関する記事や声明などを記録または保存することである。
不使用取消しの克服:ビスケット用パッケージの立体商標に関する真正な使用
英国のO2 Holding Ltd社によって申請された最近の不使用取消しにおいて、スペインのGalletas Gullón 社は、2004年12月と2009年6月に30類に登録されたビスケット用パッケージの2つの立体商標に関する真正な使用を証明しなければならなかった。
2015年6月、EUIPO(欧州連合知的財産庁)の取消部は、真正な使用の要件が満たされていると判断した。しかし、2016年5月、EUIPOの審判部はこの決定を破棄した。審判部は、登録した商標とは異なる形態で使用されているとし、その理由は、パッケージの上側に白い部分が追加され、「gúllon」、「O」、「2」と赤いパッケージに「チョコレート」の追加要素があり、商標の識別力のある要素が変更されているからだとの認識を示し、さらに、提出された使用証拠には、売上高は重要ではなく、請求書も商標との関係が明らかではなかったため、商標が真正に使用されたことの証明にはならないと判じた。
EUの一般裁判所は、2017年10月23日の判決で審判部の判断に同意しなかった。商標の異なる形態に関しては、裁判所は差異が軽微なもので装飾的にすぎないとし、識別性は変わっていないとの見解を示した。提出された証拠に関しては、裁判所は以下のように述べた。
- 標識の使用に関して、真正なものとみなすために必ずしも定量性は重要ではない。
- 提出された請求書を見ると、高収益とはいえない(5年の期間に約5,800個のビスケットパッケージを販売し、関連するブランドの売上総額が約2,500ユーロ)が、商標は、販売された商品の販路を見つけて維持するために十分広く使用されている。
- この評価は、GalletasGullón社が関連商品のマーケティングに関する多数の新聞記事や広告を提供していることによって裏付けられる。
EUの一般裁判所は、提出された請求書や他の裏付文書によって、GalletasGullón社の2つの立体商標は真正な使用を十分示したと結論付け、審判部の決定は無効となった。