インドにおけるトレードマーク実務では、国内登録により発生する商標の権利よりもインド国外の商標所有者の権利化した商標を優先することを認めている。このことは、「KYK」商標の場合に改めて明らかになった。
KYK Japanは、1950年代に商標「KYK」を採用し、日本、韓国、中国、台湾、イラン、バングラデシュ、シンガポールに商標登録を行ったが、インドでは登録していなかった。インドの会社KYK Bearing Internationalは、1996年に商標「KYK」を採用し、2007年12月に自動車部品に対して商標登録を獲得した。KYK Japanがインドで商標「KYK」の登録を考えたときインド企業の登録がハードルとなってしまった。そこでKYK Japanは、インド企業の商標「KYK」の取消しを申請し、インド企業が商標「KYK」を採用し、使用した日より前にインド国外で商標を使用していた証拠を提出した。IPAB(審判委員会:Intellectual Property Appellate Board)は、当該商標のインド国外での先使用に基づいて、インド企業の商標登録の取消しを命じた。インド企業は、デリー高等裁判所へ控訴したものの敗訴した。インドにおける商標登録は、海外の所有者によるインド国外での同一商標の先登録と先使用に対して常に脆弱であることは明らかだ。