エナジードリンクの大手レッドブルが使用している青と銀の色彩の2つの欧州商標が、商標の要件を満たさないとして、欧州一般裁判所によって無効と判じられた。この2つの商標は、識別力を獲得したとして2002年と2010年にEUに商標登録されていたが、裁判所は商標として保護するには明確さに欠けるとした。
2002年に登録されたものは、青と銀の色彩の組み合わせ標章として「エナジードリンク」を指定して32類で商標登録された。色彩についての説明は「凡そ50対50の割合」というものであった。一方2010年に登録された標章は、同様の表示形態で「同じ色の割合で並べて配置」と説明文を変更した。
EUIPO(欧州連合知的財産庁)は、レッドブルの長年にわたる集中的な利用により識別性を獲得したとして商標を登録したが、ポーランド企業の Optimum Marks は両商標に対して2003年に無効審判を請求した。EUIPOの取消部と審判部は無効の申立てを認め、レッドブルはその決定を不服としてEU一般裁判所に控訴した。
商標登録の評価
EU一般裁判所は、両商標が商標を構成する要件を満たしていないとして、無効の決定を追認した。2つ以上の色彩を持つ組み合わせは、「あらかじめ決定され,統一された方法で系統的に色彩が配列されている場合(systematic arrangement associating the colours in a predetermined and uniform way)」において,色彩の組み合わせが「標識」として認識できると判じ、また、2つ以上の色彩が単に並んで配置されたものや、さまざまに考えられる形状で色彩を含む商標出願は、正確性や永続性(accuracy and durability)の要件を満たさず、色彩商標として機能しない。
レッドブルによって提出された説明文では、非常に多くの可能な色彩の組み合わせが暗示され、様々に異なる全体的印象を作り出す多くの可能性をレッドブルに許すことになる。言い換えれば、問題商標は十分な正確性がないため登録されない。
ブランドオーナーに対する意味
特定の色彩や色彩の組み合わせを使用する権利を主張することが企業にとって容易ではないと以前指摘したが、反面色彩を持つ商標はブランドオーナーに人気だ。商標庁の多くは、出願人に広い権利を与え、色彩の独占につながるという理由で登録には消極的だ。
レッドブルの例は、登録に必要と思われる要件を示唆している。特に「systematic(系統的に)」、「predetermined(あらかじめ決定され)」、「uniform(統一された)」といった言葉は、今後の商標出願の説明文には必要になってくるのだろう。残念ながら、このような要件をどのように満足させるかという具体的なガイダンスは示されていないが、現在レッドブルは控訴しており、EU司法裁判所によって透明さが増すことを期待したい。先行きが注目される。
本文は こちら (Red Bull and the challenges of registering a colour trademark)