韓国では2018平昌冬季オリンピック大会および冬季パラリンピック大会(以下「平昌オリンピック」)の開幕を控えるなか、公式スポンサーを保護するためには組織委員会の承認を受けていない事業者が平昌オリンピックと関連した内容のマーケティング活動を行うことを規制すべきであるという指摘がされてきた。しかし既存の「2018平昌冬季オリンピック大会および冬季パラリンピック大会支援などに関する特別法」(以下「平昌オリンピック法」)では、組織委員会が指定した「大会関連象徴物等」を使用しようとする場合にだけ組織委員会の事前承認を得ることを要求していたため、このような象徴物等を使用せずに間接的に平昌オリンピックとの関連性を表す広告方式、いわゆるアンブッシュマーケティング(ambush marketing)#1が法的に禁止されるか否かについては議論が生じていた。
このため国会ではこのような議論を解消するため、2017年12月29日、アンブッシュマーケティングの概念を詳細に定義し、その禁止を明示した規定である「第25条の3」を新たに追加した平昌オリンピック法一部改定法律案を通過させ、同法は翌2017年12月30日から施行となった。改正平昌オリンピック法第25条の3は、オリンピックと関連した徽章、マスコット、聖火などの大会関連象徴物を直接使用しなくても、次のような方法を通じて特定事業者やその商品・サービスが平昌オリンピックまたは組織委員会と関連があると誤認させる行為を禁止している。
①国家代表選手、競技種目または関連施設と関連する表示・広告
②平昌オリンピックと関連する商標(文字からなる標章に限定)を使用する表示・広告
③平昌オリンピックまたは国家代表に対する応援と関連する表示・広告
④平昌オリンピックと関連する入場券や商品を景品として提供し、または提供を約束する行為
さらに、同規定は上記のような方法に該当しなくても、「その他これに準ずる方法」を通して平昌オリンピックまたは組織委員会と密接な関連があると誤認させる行為を禁止し、禁止されるマーケティングの範囲をより広げている。改正平昌オリンピック法は第25条の3の違反行為に対して別途の処罰規定を設けてはいないものの、これに違反する場合は不法行為による民事上の損害賠償請求など一定の法的責任が発生する可能性もあるため留意する必要がある。
#1 〔アンブッシュは待ち伏せの意〕
オリンピックやワールドカップなどのイベントにおいて、公式スポンサー契約を結んでいないものが無断でロゴなどを使用したり、会場内や周辺で便乗して行う宣伝活動。