2018-04-20

タイ:最高裁が「誠実な同時使用」の適用基準を明確化 - Tilleke & Gibbins

タイのアパレルメーカー、ジャスパル(Jaspal Co Ltd)は、「JASPAL」商標や他の有名ブランドで、既製の高級服「ready-to-wear(レディ・トゥ・ウェア)」の制作、販売で有名だ。

同社は最近、新しい「white bird(白い鳥)」の図形商標を付した製品ラインを立ち上げ、その商標出願を行った。しかし、先に登録された「black bird(黒い鳥)」の商標と類似しているとされ、タイ商標局は出願を拒絶した。 ジャスパルは最高裁判所に上訴し、誠実な同時使用を理由に「白い鳥」商標の登録に成功させた。

法的根拠
タイは、先願主義を採用しており、先に出願された商標に類似する商標を登録することができない。ただし、法律により、後願の類似商標の出願人は、先行する登録(または係属中)商標と出願商標の誠実な同時使用の証拠を提出することで、善意によるものであることや特別の事情であることを証明することができる。この原則は、タイ商標法第27条に規定されている。

「登録官が当該商標が善意に併存して各所有者によって使用されているとみなすとき又は登録官が登録を認めるのが適当であるとみなす特別の事情があるときは,登録官は,使用者の場所に関する条件 及び制限,又は適当とみなす他の条件及び制限に従うことを条件として,複数の所有者に同一又は類似の商標の登録を認めることができる。」

裁判所の見解
最高裁判所は、鳥の図形が同じように描かれているため、当事者の鳥図形は類似すると判断した商標局を支持した。異なるのは色使いだけで、一方が黒で他方が白というだけでは、混同の虞を払拭できない、というものであった。しかしながら、最高裁判所は、誠実な同時使用を理由に商標局の決定を覆した。
  最高裁判所は、「誠実な同時使用」の原則を検討する裁量権を行使するにあたって、この場合に混同の虞はないと判断した。最高裁判所は、以下の基準に基づいて証拠を考慮した。

  • ジャスパルのビジネスと商標の背景: タイにおけるジャスパル事業の歴史の長さと、事業拡大に伴う様々なハウスマークの使用により、新しい「白い鳥」商標は、ジャスパル製品を販促のために、2004年からジャスパルが使用していた大きな商標体系(ハウスマーク、ファミリーネーム、ペットネームなど)の中で考えられたもので、「白い鳥」図形がどのように作成され、ジャスパルのマーケティングプランでのポジショニングについて、綿密かつ詳細な説明がされた。
  • ジャスパル商標の使用規模: 「白い鳥」商標は、有名な百貨店や出版メディアで広告に掲載され、2006年には10億バーツ(34億円)を超えるコストが使われた。また、タイにおけるジャスパルのアパレル事業の成長率は、裁判所には非常に説得力のある証拠となった。
  • ジャスパル・ビジネスの認知: 裁判所は、ジャスパルがタイの消費者に人気のあるブランドと製品を持つアパレル業界のリーダーであることを認め、さらに重要なこととして、同社の名声により、商標の類似性に起因する混同の虞はなく、消費者の間で誤認が生じているという証拠は裁判所に提示されなかったとした。 

  これらの理由により、裁判所は、ジャスパルの「白い鳥」商標が、先登録された「黒い鳥」商標と同時に存在し、使用されていたことを認め、すべての証拠が示すのは、登録された 「黒い鳥」商標を不正に利用することなく、商標を使用してビジネスを拡大するというジャスパルの誠実な意図であると認め、最高裁判所は、ジャスパルの誠実さを考慮し、商標の類似性にかかわらず、ジャスパルの商標は商標法第27条の下で登録することができると結論付けた。 

本文は こちら (Supreme Court Clarifies Criteria for Application of “Honest Concurrent Use”)