2018-04-03

ロシア:破産が不使用取消請求に及ぼす影響 - GORODISSKY & PARTNERS

ロシア知的財産裁判所では、不使用商標に関する取消請求裁判が日常的に行われている。毎年数百の事件が争われ、判決が下されている。ただし、取消申請が予期しない障害に合うことがある。 

オランダの大手ビール製造会社ハイネケンは、2016年に個人起業家のYezhikoff氏が所有するビールとアルコール飲料を指定した「WINTER HUNT(登録番号:236790/1)」商標に対して知財訴訟を提起した。争われたのは3年間の不使用商標であった。知的財産裁判所は、モスクワ商事裁判所(Moscow Commercial Court)でYezhikoff氏の破産事件が審理されていることを理由に、モスクワ商事裁判所(Moscow Commercial Court)に事件を送致した。知的財産裁判所は、商標不使用は破産事件の枠組みの中で考慮すべきであると判断したからだ。

知的財産裁判所の判決に対して、ハイネケンは破毀院(Presidium of the Intellectual Property Court)に上訴した。
破毀院は、モスクワ商事裁判所がYezhikoff氏を破産者として認定し、6か月間の財産処分手続きを開始していると指摘した。知的財産裁判所は、不使用が争われている商標権は財産権であり、破産資産として扱うべきであると指摘した。そのため、破産事件の枠組みの中で商標権を考慮する必要があり、ロシア商法手続きに基づき、取消請求が破産事件の枠組みの中で判断されるならば、知的財産裁判所が審理するべきではないという判断を正当化した。

ハイネケンはこの判断を不服として、不使用取消事件はモスクワ商事裁判所ではなく、知的財産裁判所で審理されるべきであると主張した。この議論は、最高商事裁判所の以前の判決に基づいており、破産事件の枠組みで検討されるべきは債務者が負う有形資産(property)に関する債権者の請求のみで、且つ裁判所が破産を認定したのちであるべきだというものだ。ハイネケンは商標権の債権者ではない。さらにハイネケンは、商標権は財産権ではなく提訴時にYezhikoff氏の破産はまだ認定されていないと主張したが、裁判所は、ロシア連邦民法第1226条(知的財産権)に基づき商標権は財産権であると説明した。破産事件の係属中に管轄権の問題が解決された場合、その特定の財産権(商標を含む)を破産資産に含めるべきかどうか判断する必要がある。財産権である占有権は、一定の価値を有し、無形資産として破産債務者の資産の一部を構成する。

破産手続により事業が活動を停止し、破産手続きが開始されたとしたら、その財産は破産法に従って売却されるべきである。裁判所が破産手続を開始したとき、破産事件に関連するすべての請求は破産手続により棚上げされる。
ハイネケンの不使用取消請求は、破産手続の開始後に提出されたため、不使用に関する審査は行われることがなくなったが、ハイネケンは権利を守る権利が奪われたわけではない。商標権は破産資産に含まれ、他の有形資産と一緒に競売にかけられることになった。

起業家の破産管財人は、2017年11月29日に債権者集会を開催し、問題となった商標が売却されることになり、競売で$ 50のオークション価格で始まり、商標権は最終的にKantemirovskaya Ltd.が$ 500で落札した。商標権の譲渡契約は署名されたものの、2018年2月20日現在登記されていない。そのため、商標は正式には破産した所有者の名義になっている。司法実務では(たとえそれが制限されていたとしても)、不使用期間は所有権の変更により中断されることはない。したがって、取消請求はハイネケン次第である。ただ、新しい所有者は不可抗力を抗弁とする可能性もある。このような状況で、不使用取消請求をする価値はあるのだろうか?これに対する答えはまだ出ていない。 

本文は こちら (The impact of bankruptcy on trade mark disputes)