2018-04-13

中国:「拉菲」が上海で初の未登録の馳名商標に認定 - UNITALEN

集佳が代理した事件—CHATEAU MORON LAFITTE/拉菲特荘園の権利侵害と判断、賠償金200万元を

 2017年12月27日、上海知識産権法院は原告シャトー・ラフィット・ロートシルト(CHATEAU LAFITE ROTHSCHILD、以下、「ラフィット」)が被告の上海保醇実業発展有限公司(以下、「保醇公司」)と同じく被告の保正(上海)供応鏈管理股分有限公司(以下、「保正公司」)を商標権侵害で提訴した事件の公開判決を言い渡し、「拉菲」を、未登録の馳名商標でありラフィットの先行登録商標「LAFITE」が高い知名度を有すると認定し、係争標識「拉菲特」と「拉菲」は類似を構成し、また「MORON LAFITTE」と「LAFITE」は類似を構成し、ゆえに商標権侵害が成立する旨を認定した。原告の商標の知名度と顕著性、両被告の主観的な悪意、被疑侵害製品の販売状況および被疑侵害製品の輸入単価と販売価格との差の大きさなどの要素を考慮し、両被告に対し、原告に経済的損失人民元200万元を連帯して賠償するとともに、声明文を掲載し影響を除去するよう命じる判決を下した。

  「拉菲」はすでに登録商標であり、馳名商標の認定を行う必要がなく、「拉菲荘園」かつて第三者である南京金色希望酒業有限公司(以下、「金色希望公司」)の登録商標で、未登録の馳名商標は他人の登録商標の権利範囲を侵してはならず、また、被疑侵害製品は実在するフランスのワイナリー「CHATEAU MORON LAFITTE」のものであり、しかもそのワイナリーの名称はフランスで登録されているなどの両被告の抗弁は法院の支持を得られなかった。
  判決が言い渡された後、原告、被告の双方はいずれも一審判決を尊重し、上訴しない旨を表明し、この判決はすでに発効している。この事件は上海で初の未登録の馳名商標事件であり、近年、全国でも稀な未登録の馳名商標判例の1つでもある。

  この事件の審理には3つの難点が存在する。
  第1に、「拉菲」は被疑侵害行為の発生時には未登録であったが、審理の過程では登録許可を受けていた。この事件ではなお未登録の馳名商標の認定が必要であるか。
  第2に、被疑侵害行為の発生当時、「拉菲荘園」は金色希望公司の登録商標であったが、当該商標はこの事件の審理の過程で、高級人民法院から無効とすべきと判断された。係争の中国語標識「拉菲特荘園」が侵害した商標は以前の登録商標「拉菲荘園」、当時の未登録の馳名商標「拉菲」のどちらなのか。
  第3に、被疑侵害製品は実在するフランスのワイナリー「CHATEAU MORON LAFITTE」の製品であり、かつこのワイナリーの名称はフランスで登録されている。いかにして登録商標の地域性の原則と輸入ワインが真実の情報を明示するという実際の需要との関係の均衡を保つのか。

  上海知識産権法院が下した51ページに及ぶ判決書では、前述の3つの難解な問題について筋道を立てて細かい分析がなされ、三者の関係の均衡が適切に保たれており、規範となり得る判決であるといえる。
  未登録の馳名商標認定の必要性に関して、法院は、原告の商標「拉菲」の初審公告日は2014年1月27日で、商標評審委員会が、異議申立てが成立しないと裁定し登録を許可した時間は2017年2月であり、《商標法》第36条の規定によると、原告が「拉菲」の登録商標専用権を取得した日は2014年4月28日であるが、2014年4月28日から2017年2月までの間、他人の同一種類または類似の商品に当該商標と同一または類似の標章を使用する行為については原告が遡及することができず、しかもこの事件の被疑侵害行為が発生した時間は原告が「拉菲」の商標権を取得した時間よりも先であることから、被疑侵害行為が成立するか否かの判断は、「拉菲」が被疑侵害行為発生時に未登録の馳名商標であったか否かを事実の根拠としなければならず、これによりこの事件では「拉菲」が未登録の馳名商標であるか否かを認定する必要があると判断している。その後、法院は、原告の証拠書類をに基づいて、中国の関連公衆が通常「拉菲」について原告の「LAFITE」商標を指し、かつ「拉菲」は原告の「LAFITE」商標との間に安定した対応関係を形成し、被疑侵害行為発生以前に「拉菲」がすでに中国国内の関連公衆に広く知られており、未登録の馳名商標として認定できる旨を認めた。
  南京金色希望公司の「拉菲荘園」登録商標のこの事件への影響に関しては、この事件の裁判において、当該登録商標は高級人民法院の発効判決により、無効とされるべき旨が認定された。ことから、判決書にそれほど多く反映されていない。無効とされた登録商標は最初から無効であるため、以前の「権利」、「権利の範囲」もなかったことになる。この事件の判決書はこれ以上この問題に焦点を置かず、それ自体も商標「拉菲荘園」についてかつて存在した「権利」または「権利の範囲」を否定するものであった。

  各国に存在する登録商標、商号の共存の問題に関して、法院は第1に、登録商標の地域性の原則を尊重し、ワインボトルの表ラベルに表示された係争の標識「CHATEAU MORON LAFITTE」がフランスで登録されたものであっても、商標権に地域性と独立性があることに鑑み、中国国内で「CHATEAU MORON LAFITTE」が原告の「LAFITE」登録商標を侵害するか否かについて、中国の商標法に基づいて単独で判断しなければならないこと、第2に、被告が言及したフランスの登録商標は、その文字構成が「CHATEAU MORON LAFITTE APPELATION BORDEAUX SUPERIEUR CONTROLEE」で、手書き風の書体であり、係争侵害ワインボトルの表シールの商標とフランスの登録商標は一致せず、「MORON LAFITTE」標識を目立たせているので、当該商標は原告の登録商標「LAFITE」との類似度が高く、商標権侵害に該当することをそれぞれ明確にした。

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