2018-05-30

「Microsoft vs. 個人」騒動とドメイン名に潜む脅威 - GMOブライツコンサルティング

Microsoft vs. MikeRoweSoft」騒動から見る、ドメイン名に潜む脅威

これは、カナダに住む学生が取得した1件のドメイン名が巻き起こした企業対個人のドメイン名騒動です。20038月、当時17歳の学生マイク・ロウ(Mike Rowe)氏は、自身の名前にソフトウェアの”Soft”を付けた「mikerowesoft.com」のドメイン名を取得し、Webデザインビジネスとしてのサイトを立ち上げました。

翌年の2004114日、ロウ氏はマイクロソフト社の法律チームから手紙を受け取りました。手紙は、「mikerowesoft.com」は”microsoft(マイクロソフト)と発音が酷似しており、商標侵害の対象となっている。登録費用$10と引き換えにドメイン名の譲渡を要求する、という内容でした。侮辱されたと感じたロウ氏は、譲渡の要求を拒否し、$10,000を要求する回答をしたところ、その数週間後、ロウ氏は25ページに渡る書簡を受け取り、マイクロソフト社から「 サイバースクワッティング 」行為を行っているとして訴えられました。

「サイバースクワッティング」とは
主にドメイン名の転売を目的として、企業の商標や商号を第三者が先に登録しようとする行為のこと。
スクワット(squat)という言葉には、無断居住や、不法占拠といった意味があります。ドメイン名の取得は基本的に早い者勝ちであり、希望する文字列がまだ誰にも取得されていなければ、希望の文字列を登録することができるため、サイバースクワッティングによって有名企業や有名人の名称と同じ、あるいは酷似した文字列をドメイン名として登録し、転売利益を得たりする行為が登場しました。

ロウ氏は、自身のドメイン名を非常に気に入り、売るつもりがなかったために高額な費用を提示しただけで、マイクロソフト社のような大企業がこのような圧力をかけてくるとは思っていなかったのです。この騒動は国際的に注目されるニュースとなり、匿名の支持者により、裁判費用として$6,000もの寄付金が送付されることにまで発展。大きくなった騒動を受けたマイクロソフト社は、態度を改め、ロウ氏のドメイン名と引き換えに、新しいウェブサイトの立ち上げ、マイクロソフトの認定コース無料受講件や、X-Boxといくつかのゲームソフトを渡すなどの対処をすることで、和解を成立させました。その後、寄付された裁判費用はロウ氏が新しく立ち上げたサイトで使い道の投票を受け付け、多くのお金が寄付へ使用されました。
因みに、現在「mikerowesoft.com」は「microsoft.com」へ転送がされ下記サイトが表示される仕様になっています。

この騒動以降も、マイクロソフト社だけで数百ものドメイン名における紛争が提起されています。 2010年のサイバークワッティング調査で、ハーバードのベン・エデルマン氏によると、「microsoft.com」というドメイン名のタイポミスなどによる文字列が酷似したドメイン名は705件存在し、その内328件は不法行為がされている可能性が高いドメイン名であることがわかり、多くの「 タイポスクワッティング 」がされてしまっている状況が露わとなりました。

「タイポスクワッティング」とは
タイポ(typo)とは、タイプミス、キーボードの打ち間違いのことを指し、「タイポスクワッティング」とは打ち間違われやすいURLを無断で占拠する行為です。
単に打ち間違いやすいドメイン名を取得することには違法性などはないですが、無断で占拠したタイポのドメイン名から、フィッシング詐欺や、ウイルス、アドウェアやスパイウェアなどのマルウェアに感染するサイトへと誘導されるケースが、企業にとっての大きな脅威となります。ウイルス感染のサイトだけでなく、あたかもオフィシャルサイトのようなウェブを立ち上げることも、近年多く見る事例です。

タイポの種別は様々なものが存在し、そこから導き出される文字列も様々です。”microsoft”のタイポ文字列は下記のように様々なパターンが考えられるのです。

この騒動では、ロウ氏は悪意のない、あくまで個人の趣味の範囲での登録でしたが、マイクロソフト社は、重要文字列だけでなく、タイポを含む重要文字列の監視や把握を積極的に行っていることなどが伺えます。
出典:https://priceonomics.com/microsoft-vs-mikerowesoft/