2018-06-25

インド:商標局が原因の遅れで訴訟になった事件 - R.K.DEWAN & Co.

 法律の厳格な解釈と柔軟なアプローチに関する議論は決して終わることはない。前者の支持者は、厳格な解釈はあいまいさの余地がほとんどないとしているが、後者の支持者は、柔軟なアプローチは、それぞれの事件で成り行き的な裁定に頼る意志が固い。期限に関するインドの1999年商標法の条項は厳格である。登録商標の更新申請は存続期間満了までの1年間で行わなければならないが、そのような機会を逃した場合、存続期間満了日経過後6ヶ月以内に追加料金を支払えば商標を更新することができる。また、この6ヶ月以内に商標が更新されない場合、登録官は当該商標を登録簿から抹消することができる。ただし、商標の存続期間満了日から1年以内であれば、更新手数料と回復費用の支払いとともに所定の申請書を提出することによって商標権が回復される可能性もある。M/sイプシロン出版Pvt LTD(以下、イプシロン)は、商標の存続期間満了日を過ぎた更新申請で、追加料金を支払わなければ、更新の不履行に当たるかどうかの審理をデリー高等裁判所に委ねた。

 イプシロンは16類で登録商標「Easy Notes」、「Easy」および「Epsilon」の所有者であるが、Jain氏に対して、商標「Lokpriya Easy Notes」を使用したとして商標侵害訴訟を提起した。Jain氏は、1977年から商標「Lokpriya Easy Notes」を使用していたと主張しており、2001年に商標登録を受けている。したがって、登録商標の所有者として当該商標を使用する権利があることになる。イプシロンは、商標「Lokpriya Easy Notes」の更新が商標規則に違反していると主張する意見書を提出した。イプシロンの弁護人は、商標の存続期間満了後6ヶ月以内に追加料金を支払った場合にのみ商標登録を継続することができると主張した。Jain氏は、更新期限が切れて17日後に更新申請書を提出したが、追加手数料は支払わなかった。追加手数料の不払いについては、2017年に商標登録簿に記載されたが、商標更新からほぼ6年後経過してJain氏に通知された。通知を受け取った時点で、Jain氏は追加手数料を支払うことで問題を修正し、「Lokpriya Easy Notes」商標を登録簿に残した。イプシロンは、追加手数料の支払いの遅れに関して異議を提起し、商標法第25条(3)に基づき、登録官は手数料の納付された時にのみ商標を登録簿に残すことができると主張した。また、2002年商標規則の規則66(および2017年商標規則の規則60)で規定されているように、登録官は当該回復及び更新の請求を審査する間,影響を受ける他の者の利害も参酌しなければならないため、登録官はイプシロンに機会を提供すべきであったはずであるとも主張した。

 裁判所は、イプシロンの弁護人の主張が容認された場合、登録期間満了日から6ヶ月のグレース・ピリオッドが認められる商標法第25条(3)に反している。しかし商標登録官は、法律の定める手続に従うことになっているため、登録官が原因の遅れの場合は、商標所有者に不利益を与えてはならない。したがって商標更新は認められるとした。さらに2002年商標規則の規則66(第三者の利害)は、問題の商標がすでに登録簿から削除されている場合に適用されるため、今回のケースのように商標が登録簿に残っている場合は適用されない、と結論付けた。この決定は、商標出願の大きなバックログを抱えている商標局の処理の遅れで不利益を被る傾向がある商標所有者にとって有効な先例となる。

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