2018-08-24

EU:「FRANCE」商標は誰のもの? - Novagraaf

フランス政府は、「FRANCE」という文字を含む商標に関してある企業と争っている。 NovagraafのArdine Siepmanは、「FRANCE」という文字を誰が所有することができるかを争ったEUの一般裁判所による最近の判決を解説する。

対France.comのフランス政府の争いでいくつか考慮すべき重要な問題が生じた。重要なのは商標の類似性だけでなく、文字要素 「FRANCE」の意味も同様だ。フランス政府が「FRANCE」という文字の知的財産権を先に保有することは可能だろうか?あるいは「FRANCE」という文字はその知的財産権の所有を誰も主張できないパブリックドメインなのだろうか?

紛争の背景
2014年8月9日、France.comの所有者は、広告や旅行サービスを含むサービスを指定して図形商標(左図)をEUに出願した。
フランス政府は2014年12月4日に、コンピュータソフトウェア、広告、文化・教育サービスなどを指定してEUに先に国際出願登録した図形商標(右図)との混同の虞を根拠に異議申立を行った。
混同の虞は、先に登録された権利との比較において商標の登録可能性を評価する際の重要な基準で、混同の虞を確認するために両商標の外観、称呼、観念と関連する商品・サービスを評価する。 
当初、異議はEUIPOの異議部に棄却されたが、フランス政府はEUIPOの審判部(Board of Appeal)に上訴し、異議部の決定を破棄することに成功した。両商標の比較において、デザインは異なるものの共通する構造や特徴によって、平均程度の外観的類似性があると結論付けられたからだが、問題の商標は称呼的にも観念的にも同一である。なぜならば両商標の中央に「FRANCE」という文字が位置し、フランスに関連するエッフェル塔のイメージと青・白・赤の色彩があるからだ。出願人は、審判部の判定を不服として控訴したが、EUの一般裁判所は、2018年6月26日に問題の商標間に混同の虞があることを認める判決をした。

「短縮された」国名は商標登録の対象となるものの…
EUの一般裁判所は、この裁判で「FRANCE」という文字自体は商標登録できると結論付けた。これは、「MONACO」商標に関する以前の決定に沿ったもので、EUの一般裁判所は、短縮された国名に対応する標章を商品の出所やサービスの提供場所として使用することができると判じている。
しかし、そのような標章は保護されている商品とサービスを説明するものである。(この例は、文字要素「FRANCE」を「FRANCE REPUBLIC(フランス共和国)」の短縮された名前としている)。商標の要素が説明的である場合、その要素は非常に弱いため商標を登録するためには識別性の基準が満たされなければならない。さもなければ「MONACO」商標のように商標登録できない可能性もある。
しかし、弱い要素であっても位置とサイズによっては要部となることもあるし、他の要素と組み合わせることで識別力を獲得することも可能だ。また、商標が文字要素と図形要素で構成されている場合は、文字要素だけで構成されているものより識別力が増すという事実も考慮に値するが、平均的な消費者にとって、商品やサービスを想起するのは、商標に描かれている図形的要素よりも名称の方が簡単なようだ。

そして、EUの一般裁判所は、問題の商標間の外観的類似性の程度は低いものの、称呼的および観念的に同一であると判断した。また、先行する商標の弱い識別性により混同の虞が排除されるものではなく、問題の商標間と指定するサービス間が類似するため、問題の商標間で混同する虞があると結論付けた。

本文は こちら (Who owns ‘France’?)