商標登録手続きで、商標の類似性は他の商標との比較において決定される。このプロセスは、いわゆる「ファミリー商標」を所有する商標権利者に不利になることがある。最近、最高裁判決は、タイで初めてファミリー商標のような共通要素に対する排他的権利の主張に門戸を開いた。
ヴァレンティノのファミリー商標
ヴァレンティノ・グループの標章は、やを特徴とする図形標章やその他の組合せと共に共通する独自の文字「Valentino(ヴァレンティノ)」として消費者に認識されており、ヴァレンティノのファミリー標章は、個別の標章としてだけでなく、共通する特徴を持つファミリー標章としても商標権利者と関連付けるように使用されてきた。
商標の争い
イタリア企業のヴァレンティノS.P.Aは、世界中で「Valentino」という文字を含む多くの商標を登録したが、タイにおける「Valentino」商標は競争相手の「Valentino Rudy(ヴァレンティノ・ルディー)」からの異議を申立てられた。「Valentino」は、広く使用されているイタリアの名前であり識別力がないという理由からだ。ヴァレンティノ・ルディーの主張は、「Valentino」という文字は一般的な姓であり識別力がないというもので、登録官と商標委員会は異議を認めた。ヴァレンティノ S.P.Aはその決定を不服として上訴し、最終的に最高裁判所に判断を委ねた。
裁判所の見解
最高裁判所は、ヴァレンティノ・ルディーの主張を退け、ヴァレンティノS.P.Aに有利な判決を下した。裁判所は、「Valentino」がバレンティノ・ガラバーニ氏の名前から取ったもので、タイの一般公衆に知られている普通の人の名前でも姓でもなく、商品の特性を説明するものでもないとして、「Valentino」には本質的な識別力があると判じた。また、裁判所は、上記の「Valentino」シリーズ商標を検討した結果、共通要素「Valentino」が同じ所有者によって製造され販売される商品グループと関連付けることができるとの見解を示した。
このケースは、第三者が「VALENTINO」のファミリー標章と同じタイプの商品で「Valentino Rudy」標章を保護するために出願したもので、「VALENTINO」の部分を署名様式で書き「Rudy」という文字を追加したものだが、裁判所には商標の主要な部分がValentino SPAと同じ文字「Valentino」が共通していることは明らかで、両商標の違いは、「VALENTINO」のファミリー商標としての印象を持つ一般公衆にとっては取るに足らないものだとして、商標の原則に基づき、当事者の商標は類似していると判断した。したがって、共通する特徴によりヴァレンティノS.P.A.の商標グループおよび商品の出所に関して公衆が混同を生じる虞があるというものであった。
結論
この訴訟によって、タイの最高裁判所は「ファミリー商標」の概念を初めて明示的に受け入れた。裁判所が商標の類似性を検討するだけでなく、関連する相当数の商標についても類似性を確認するということはとても興味深い。
商標が広く認識され、商品の出所を十分に示すことが証明される「ファミリー商標」の原則に基づく類似性の検討は、類似する特徴の保護につながり、ファミリー商標と共通する特徴を有するが、商標の全体的な外観が特定の登録商標と類似していない第三者の標章の登録を防ぐことができる。この新しいアプローチは、商標開発をしようとするトレーダーに大きな利益をもたらすことになろう。
本文は こちら (Thai Supreme Court Accepts the Concept of Trademark Family)