スローガンの商標保護を求めるのは、不可能ではないものの困難が伴う。実際いくつかのスローガンは商標登録に成功しているが、登録要件を満たすのに苦労している。商標弁理士Trecina Surtiが欧州連合(EU)のスローガン保護を説明する。
スローガンは、広告宣伝で使われる印象的なモットー、フレーズ、タグラインで、一般には主たるブランドと共に使用されることが多い。スローガンはブランド・アイデンティティを構築するのに役立つが、商標として登録するための識別力があると考えられることはあまりないが、ナイキの「JUST DO IT」やマクドナルドの「I’m LOVIN ‘IT」の例が示すように、商標登録は可能だ。
スローガンを商標として登録する理由
良いスローガンは、ブランドに大きな価値を与えられる。企業はその価値と創造に関わるマーケティング活動とリソースを守りたいと考えるだろう。しかし、スローガンの商標保護には商標の登録要件が満たされなければならない。つまり;
* 指定する商品・サービスの区分で登録可能でなければならない:同じ管轄区域で同一または類似するスローガンが同一または類似する区分にすでに登録されていれば登録できない。
* 記述的であってはならない:商標が指定する商品・サービスの分野で記述的すぎると商標登録機関は拒絶する可能性が高い。
* 「識別力」がなくてはならない:使用される表現が独特であればあるほど、商標が登録される可能性が高い。
スローガンを商標として登録しようとするブランドオーナーにとって、しばしば最大のハードルとなるのが、「識別力」の要件である。EUIPO(欧州連合知的財産庁)はスローガンの商標保護に関して特に厳格であり、そのような商標は第一に抜きんでて目立つものでなければならない。言い換えれば、説明的で一般的な表現はEUで登録を獲得する可能性は低い。
努力することなく印象に残る
以前、スローガンは基本的に商標として機能するには十分な識別力がないとされていた。しかし、EUIPOでアウディが7年間争った「Vorsprung durch Technik(技術による優位性)」のスローガンによって、この見解に変化がもたらされた。CJEU(欧州司法裁判所)は、広告にスローガンが普通より多く見られるならば、商標を構成するのに必要な識別性を持つことができると2010年に判じた。CJEUはまた、スローガンが簡単に印象に残るもので、想像的かつ意外なもので、言葉遊び(easily memorable, imaginative, surprising, unexpected, or a play-on-words)だとすれば、商標と見なされるために必要な識別性を持つとしている。
獲得した識別力
キットカットの「HAVE A BREAK」スローガンは、識別力がないという拒絶理由を克服したが、この商標の場合、長年の使用があったからだ。裁判所は、登録商標「KIT KAT」と併せてスローガンを使用することで、スローガン商標は使用によって識別性を獲得できたと判断した。そのためネスレは1950年代に広告スローガンで使用していたスローガンの識別性を示す大量の証拠を提出した。
このように、長年にわたる良い広告キャンペーンにより、商標が識別力を獲得した場合は、記述的である、または識別力がないという登録要件のハードルを克服できる。しかし、数ヶ月の短期間マーケティングキャンペーンでは十分な証明にはならない。
商標登録を念頭に置くスローガン・デザイン
出所表示となる販売促進用のスローガンは、EUにおいて商標として登録可能であるとみなすことができる。そのためには、消費者が商品・サービスの提供元を特定できるように、簡単に識別できるユニークで独特のキャッチ・フレーズを選択することを勧めたい。