一見して無制限の文字の選択と無限の想像力にもかかわらず、同一または類似した文字に出会ってしまうことは珍しいことではない。日常の生活の中でこれらは同じ綴りや同じ発音であっても意味の違う言葉であれば問題を引き起こすことは殆どない。ただし、それが知的財産の世界では別の話となる。同一または類似した言葉が違う意味を持っていたとしても、消費者の目にはそれらが同じものに映るかもしれず、ビジネスにはマイナスとなるかもしれない。
だいぶ前の話だが、10類の商品に対して、ロシアおよび他の国々で2000年に出願登録された商標「LINOS」(国際登録番号754940)があった。その後、別の商標「LUNOS」(国際登録番号1279699)が3類、5類、10類、21類の商品を対してロシアを事後指定した。ロシア特許商標庁は、10類を除くすべてのクラスにおいて登録を認めた。10類が除かれた理由は、「LINOS」との類似性にあった。
「LUNOS」の出願人は、特許商標庁の決定を不服として上訴し、引用された商標「LINOS」の所有者から10類の商品について、拒絶理由を解消するために同意書を取って提出した。特許紛争(審判)室は、審査官が審査時に同意書を考慮することがなかったとして、商標登録を認めた。
引用された商標の所有者が共存することに同意し、かつ消費者が関連商品において誤解を生じさせない場合、法律は引用された商標と混同のおそれのある商標との共存を認めている。
同意書が提出されると、特許商標庁は混同のおそれが生じるかどうか、生じるとすればどの程度かを調べることになる。特許商標庁は、混同のおそれを確認するために以下の項目を含むガイドラインを作成した。(1)出願された商標と引用された商標との同一性がどの程度かをチェックする。(2)引用された商標が広く知られているかどうか、消費者が特定の製造業者と関連付けるかどうか。(3)引用された商標が団体商標であり、消費者に広く知られていないかどうか。
同意書を提出する実務は日常的なものだが、この種のすべての請求が受け入れられるわけではない。例えば、商標が同一で商品が同一である場合、特許商標庁は同意書を認めない決定をすることができる。大まかには同意書の約90%が認められ、類似する商標が登録されているが、稀に拒絶されることもある。