2019-01-10

欧州:色彩のみの商標登録の難しさ - Novagraaf

色彩のみの商標を登録するのは不可能ではないもののかなりの困難が伴う。欧州連合司法裁判所(CJEU)の多くの判例は、公共の利益と自由な競争のために、企業が特定の色彩を独占しないようにする必要性を示している。それでも、色彩および色彩の組合せに識別性があれば商標として登録できる。NovagraafのTimo Buijsは、最近のCJEUの判決から、商標法における色彩の機能、および単色や色彩の組合せ商標の登録可能性について解説する。

獲得した識別力
実務的には、色彩が識別力を獲得したときに商標として保護を受けられると思料される。言い換えれば、関連する公衆が、商標を使用した結果として、特定の商品・サービスを特定の企業の出所と認識し始めた場合で、集中的な使用や長期間の使用により、関連する公衆が保護が求められる色彩商標を付した商品・サービスと他社の商品・サービスとを区別できることを意味する。

単色の場合
CJEUは「Libertel」判決において、単一の色彩は明確かつ正確な方法で視覚化できるという条件で、商標として登録することができると判示した。この条件は、単に紙の上に色彩を再現するだけでは満たされず、色見本と共に国際的に認められたカラーコードで示すことによって要件は満たされる。欧州連合では、2017年10月1日から視覚表示要件がなくなった。ただし、この変更は色彩商標の登録にとっては重要ではない。色彩商標の出願では、「明確かつ正確な方法」で表現できるという要件を満たす必要があるからだ。色彩商標が登録されるためには、カラーコードおよび/または色見本が含まれていなければならない。さらに、獲得した識別力を証明しなければならない。商標登録された有名な単色の商標には、T-mobileの「マゼンタ」やミルカ(MILKA)のチョコレートバーの「ツヴィツァル・イエロー(Zwitsal-yellow)」や「パープル」がある。

色彩の組合せの場合
CJEU判例によれば、色彩の組合せを商標として登録するには、商標出願に「前もって決定され,かつ一貫した方法で色彩を関係づける系統的な配列(systematic arrangement associating the colours concerned in a predetermined and uniform way)」が含まれていなければならない。もし商標出願の記載が考えられる様々な形式で使用できる2色の構成であれば登録は拒絶される。使用する商品・サービスにどのように色彩を組合せるのかを明確に記載する必要がある。この判例により、(よく知られている)色彩の組合せ幾つかの登録は、有効な商標として見なされなくなった。たとえば、下図のレッドブル(Red Bull)の色彩の組合せは、2015年にEUIPO(欧州連合知的財産庁)によって無効とされ、EU一般裁判所によって支持された。

2018年10月25日に確定した別の判決で、CJEUはレッドブル事件と一致した判断を示した。本件は、風力エネルギー変換装置と構成部品を指定した「混合した緑色のグラデーション」からなる下図の標識を商標として登録できるかどうかであった。

ドイツの大手風力タービン製造会社エネルコンは上図の標識を色彩商標としてEUに出願した。エネルコンは、出願書類と共にカラーコードを提出し、当該標識を色彩商標として登録する意思があることを示したが、第三者によって無効申立てが行われた。EUIPOは、商標は色彩を一般的な風力タービンタワーに使用する方法で示されており、色彩商標として識別力がないとの判断を示した。
エネルコンは、この決定を不服として審判請求し、商標は色彩商標としてではなく図形商標として登録されるべきだと主張した。EUIPOの審判部はこの主張を認めたが、控訴審でEU一般裁判所もCJEUも問題の標章は実体は色彩商標であるとし、この色彩商標には明確な識別力がないと判断を下した。

厳しい条件
単色や色彩の組合せは、多くの企業で商品やサービスを区別するための標識として使用されているが、これらの商標保護を検討する際には、厳密な要件が課されることに注意してほしい。色彩は明確かつ正確な方法で記載されなければならず、ほとんどの場合、獲得した識別力を示す必要がある。
最近のCJEUの判決では、色彩商標は識別性の条件を容易には満たさないこと、そして使用する商品・サービスに対して識別性を獲得するためにはよく考えられた戦略が必要であることが再度強調されている。

本文は こちら (The challenge of securing colours and colour combinations as trademarks)