以前から、知的財産権の行使に対する法的な抑止策として、悪意を主張することがあった。誠実の原則は、工業所有権の保護に関するパリ条約およびロシアの制定法、民法、不正競争法によって定められている。しかし、この法的概念は過去にあまり適用されてこなかった。ところが、このところ裁判所は権利の濫用を適用することに躊躇がなくなったようだ。
今日では、権利の濫用は、請求人の不当行為に対する法的な対抗措置として最上位に位置している。裁判所は、商標権の行使が商標の独占権の乱用にならないように、事件を取り巻くすべての状況と事実関係を調査する。
この一例に、「NITRO」商標の権利者によって始められ、裁判所によって棄却された訴訟がある。ロシアの会社AutoVita LLC(原告)は、AlphaEnergy LLC(被告)が原告が所有する商標「NITRO」に類似した商標を付した自動車およびオートバイ用のバッテリーを販売していることを見つけ、バッテリーの販売差止めを求め裁判所に提訴し、商標の不正使用に対する恒久的差止命令および法定補償を請求した。
当初、バッテリーと商標の表示が紛らわしく似ていて、被告が商標の使用に関して権利者の許可を得ていなかったため、原告の請求は認められると思われた。
しかし、後に原告の悪意による商標権の濫用が明らかになった。裁判所は、原告が「NITRO」商標を国内登録する何年も前から、類似する商標を付したバッテリーをロシア市場で販売していたと認定した。過去においても今回も、被告にバッテリーを供給していたMotopiter LLCは、独自の法的請求はせず、訴訟には第三者として関与していた。さらに、Motopiterが供給するバッテリーは、ベルギーの会社DC-AFAM NVによって製造され、「NITRO」の国際商標登録を先行して所有していたことが分かったが、ロシアでは保護されていなかった。また、調査により、原告が過去にも現在もこの商標を付したバッテリーを製造していなかったことも判明した。これは原告が当該商標を使用したことがないことを意味している。これらの事情を考慮して、裁判所は、原告の請求が根拠のない利益を得ようとしたものと判断した。したがって、原告の訴えは権利の濫用を構成するとして棄却された。原告はその決定を不服として控訴したが、控訴裁判所は明白に原判決を支持した。
裁判所のよるこのような傾向は、ディーラーや第三者が不正に商標を登録することによる不正な訴訟に苦しんでいる企業にとって光明となることだろう。
本文は こちら (New court decisions provide fresh wisdom on trademarks in Russiaの一部)