2019-03-25

EU、英国:合意なき離脱の可能性とマドプロ・ユーザーへの影響 - WIPO

英国政府は、英国議会によって承認された場合、マドリッド制度の下でEUを指定した国際登録出願中の商標や登録済みの商標について、英国における継続的保護を規定する行政委任法案(draft statutory instrument)を公表しているが、この規定は、合意なき離脱の場合にのみ適用される。

1.本法案の発効には英国議会による承認が必要で、承認されれば、法案は英国がEUを合意なく離脱した日から実質的に有効となる。
2.一般論として、法案が示している対策は、EUの指定日から英国における新しい独立した権利をもたらす。なお、この権利は英国法に準拠し、マドリッド議定書に準拠するものではない。
3.また、権利者はその後に国際登録で英国を事後指定することで、新たに独立した英国の権利を置き換え、マドリッド制度の集中管理機能によってもたらされる利点を取り戻すことができる。
4.法案は以下の4つのシナリオを考慮している。

I. EU離脱前に保護されているEUを指定する国際商標
5.EUを指定する国際登録商標は、英国知的財産庁(UKIPO)がEU離脱前に無料で自動的に新しく英国の国内商標として登録する。新しい英国の登録商標は英国法に準拠し、国際登録の制度からは外れる。  
6.新しく登録される英国商標は、権利者がEU離脱後に英国を指定する国際登録に置き換えることができる。この場合、権利者は、マドリッド議定書第4条2の規定に従い、UKIPOの登録簿に国際登録について記載するよう求めることが望ましい。
英国:合意なき離脱の場合、行政委任法は英国でマドリッド制度の下でEUの指定を継続的に保護すると規定している。 

II. EU離脱前のEUを指定する出願係属中の国際商標
7.EU離脱前に出願係属中(EUでは保護も拒絶もされていない)のEUを指定する国際商標について、出願人はEU離脱日から9か月以内に英国へ商標登録を申請できる。その出願は、条件を満たせば、係属中のEU指定日および優先権主張の恩恵を受けられる。
8.当該出願による英国登録は、その後英国を指定する国際登録に置き換えることもできる。
9. 英国に出願する代わりに、英国のEU離脱日までEUを指定する出願商標が係属中であることが予想される出願人は、マドリッド制度の集中管理機能の恩恵を受け続けるために、早めに英国を事後指定することもできるが、この場合、英国への事後指定は、係属中のEU指定日および優先権主張の恩恵を受けられない。

III. 英国のEU離脱前にEUに変更(transformation)される商標
10. 国際登録の変更は、マドリッド議定書第9条の5に基づき、本国官庁の請求により基礎となる標章の効力停止に起因して、国際登録は取り消される。
11. EU離脱前にEUIPOに提出された変更商標について、出願人はEU離脱日から9か月以内に英国への商標登録を申請でき、その出願は、条件を満たした場合、取り消された国際登録のEU指定日およびは優先権主張の恩恵を受けられる。

IV. 英国のEU離脱前の6か月以内に権利満了となる国際登録のための規定
12. EU離脱前の6ヶ月以内に権利満了となるEUを指定する国際登録に対して、UKIPOは無料で自動的に新しく英国の国内商標として登録する。
13. ただし、この登録された英国商標は、国際登録が更新されたことを権利者がUKIPOに通知するまで期限切れとして扱われる。通知は、EU離脱日から9ヶ月以内に行わなければならない。登録された英国商標は、通知日から失効したものとして扱われなくなり、国際登録に置き換えることもできる。

マドリッド制度の利用者のために、国際事務局は本文記載の附属書を作成した。これは上記のシナリオをより詳細に説明している。

本文は こちら (Possible ‘No-Deal’ Brexit: Implications for Madrid System Users)