2018年、中国の通信会社ハーウェイは、ヘッドセットとイヤホンを指定商品とする商標「Freebuds」という文字標章をEUに商標出願したが、EUIPO(欧州連合知的財産庁)は、識別力がないとして商標登録を拒絶した。そして、この査定はEUIPOの審判部にも支持された。Novagraaf のFrouke Hekker氏が解説する。
言うまでもなく、商標として登録するためには、ブランド名やロゴなどの標識が登録基準を満たしている必要がある。特に、関連する公衆が、他の事業者の特定の商品・サービスと区別できるように、識別力がなくてはならない。標識がこの要件を満たしていなければ、商標出願は拒絶されるか、または商標権が与えられても、登録に異議を申し立てられ、取り消される可能性がある。
区分の問題
商標の出願人は、商標出願で使用する(または使用予定である)商品・サービスを指定しなければならない。指定する商品・サービスは、45の区分(商品:34区分、サービス:11区分)を定めるニース国際分類に基づくものでなければならない。商標の保護範囲を定めるために、商品とサービスの説明はできるだけ明確で正確なものにすべきである。保護を求める(支配的な)文字要素が指定商品・サービスを単に説明するものである場合、登録要件は満たされない。したがって、識別力を評価する際には、その標章がどんな商品やサービスに使用されるかが重要となる。
「Freebuds」商標で問題となったのがこの点だ。「Free(自由)」および「buds(芽)」という文字に識別力がなく記述的であるため、EUIPOに商標登録を拒絶されたのだ。その後審判請求されたが、審判部は審査官の判断に沿った決定を行った。
留意点
第一に、審判部は、「公共の利益」のため、識別力がなく記述的な標識は登録から除外されると説明した。言い換えれば、そのような標識は、誰もが自由に使用できなければならず、排他的な商標権によって特定の商品やサービスに対する使用を独占されてはならない。この場合、関連製品は主に大勢の公衆向けであり、平均的な注意を払う消費者を対象としている。
次に、審判部は、「Free」および「buds」という文字が普通に使われる名称であるという審査官の査定を追認した。「Free」は、形容詞として使用されるとき、制約や障害がなく自由に何かをすることとして関連する公衆に理解される。また、「buds」は文字通り花や葉が成長する木や草の芽を意味するが、耳栓の同義語でもある。
審判部の結論は、「FreeBuds」という標識は、関連する商品、すなわち9類の「ヘッドセット、イヤホン」に対して記述的なものである。特に、関連する商品の特徴、つまり問題の商品が音楽・ラジオ・電話などを聴くことができる耳栓(buds)の形をしたイヤホン(及びヘッドセット)であるという事実を関連する公衆が(制約や障害なく)率直に認識するのに時間はかからない、というものであった。
識別力の制約を克服する
最初の出願時に、標識が商標として登録するのに不適切であると見なされたとしても、それが使用を通じて識別性を獲得できるのであれば、商標保護の対象となる可能性がある。「獲得された識別力」は、商標を長い期間または集中的に使用することで広く認識されるようになった場合に適用される。言い換えれば、標識が識別標識、つまり商標として機能し始めたときである。とは言っても、最初の出願で登録できる十分強い(そして利用可能な)ブランド名やロゴであるのが一般的なお勧めだ。
限られた識別力しか持たない標識は、識別力のある要素と組み合わせることによって、その識別力を強化できる(例えば、文字や図形要素を含む結合標章)。しかし、登録された商標権は、個々の要素ではなく、商標全体のみを対象とすることにも注意することが重要だ。
本文は こちら (Trademarks and distinctive character: Huawei application nipped in the bud)