第35類役務は中国の商標登録分類の体系において特別な存在である。多くの企業は、その業務範囲を問わず、いずれも指定役務を第35類として、商標登録出願すべきであると考え、多くの代理人もお客様に第35類役務に関する商標登録出願を提案している。このような現象が生じているのは、現在、大部分の商品の卸売・小売役務がまだ中国商標登録の商品・役務分類に導入されていないことにより、出願人と一部の商標弁理士が第35類の役務内容の本質を取り違えていること、それに先取出願及び冒認出願が依然として深刻で、電子取引プラットフォーム及びショッピングモールなどからの強引な要求があることにより、出願人に指定役務を第35類として商標登録出願させることを加速させているからである。しかし、その経営業務に関わっていない第35類を指定役務として登録された商標が、3年不使用を理由として取消審判を請求されると、合法で有効な使用証拠を提供できないことにより、登録商標が取消されるという運命を免れない。
本稿では、人民法院の使用証拠に対する認定及びその理由を分析し、第35類役務の本質及び商標使用の本質を検討・研究した。
<まとめ>
- 商標行政機関及び人民法院の第35類役務の本質に対する認定は明確であり、即ち、自己ではなく、第三者に関連サービスを提供することであり、特に「販売促進(他人のため)」役務は、自社の商品(当該商品が他人により製造されたものでも同じ)を経営販売する行為を含まないことである。
- 実際に使用された標識が登録商標と完全に一致していない場合、関連公衆が依然として当該標識を関連役務の商標に識別することに影響を及ぼさなければ、この実際の使用を係争商標の使用と見なすことができる。
- 商標権者による自らの使用、使用許諾による他人の使用、商標権者の意志に反しない他の使用のいずれも、実際の使用行為に該当すると認定できる。
- 当所が取り扱った数多くの実際の事件からも、商標局が3年不使用取消審判の請求事件における使用証拠に対する審査を和らげているのに対して、商標審判委員会及び人民法院は厳しく審査・審理していることが分かる。しかも、商標局の段階において、商標登録者より提供された使用証拠に対して証拠調べ手続きがないので、商標局が相手側の当事者の証拠の質疑意見を聴取せずに審決を下すことは、偏った判断をする恐れがある。また、商標権付与・確定の行政訴訟事件において、係争審決の取消率の最も高い事件のタイプは3年不使用取消審判請求事件である。これらの事件の対応には、商標局が下した審決又は不服審判の審決が自分に不利である場合、当事者はぜひ積極的に救済措置を取るべきである。また、自分にとって有利である場合でも、決して油断しないで引き続き積極的に対応すべきである。なぜならば、商標局の審決又は不服審判の審決が究極の決定であるわけではなく、当事者はいずれも後続の救済プロセスを利用して結果を逆転させる可能性があるからである。
- 登録商標の3年不使用取消審判は、商標登録者、3年不使用取消審判の請求人、商標審判委員会という三方に関わるため、その対抗性が強い。商標としての使用、商品及び役務、使用証拠の形式、証拠の効力、使用期限、使用主体などの問題がいずれも複雑な専門的な課題である。商標の共存を3年不使用取消審判請求人と交渉するのか、商標登録を改めて出願するのか、及びどのタイミングでこれらの措置を取るべきであるのかについては、いずれも事件の状況と利害関係を全面的に考慮する必要がある。しかも、これらの要素がその事件の結果に大いに影響する。したがって、よい結果を獲得するためには、専門の知財弁護士に依頼するのが得策であると思われる。
参考資料:
- (2016)京 73 行初 3780 号行政判決書
- (2015)京知行初字第 3758 号行政判決書
- (2016)京行終 117 号行政判決書
- (2015)京知民終字第 1828 号民事判決書
- (2018)京行終 269 号行政判決書
- (2016)京 73 行初 3890 号行政判決書
- 《類似商品と役務区分表》(2018 版)
- 『国際分類第35類役務のショッピングモール、スーパマーケットーの役務を含むか否かの問題に対する返答』
- 北京市高級人民法院知識産権審判参考問答(17)
全文は こちら (登録商標の3 年不使用取消審判事件における第35類商標の使用証拠の 認定について-3 つの事件を通しての検討)