アイスランドフーズ(Iceland Foods)の商標「ICELAND」を以前に取り上げた。このような地理的表示は商標と成り得るだろうか?アイスランド政府は、欧州登録商標「ICELAND」の取消しを申請した。最近、この件で興味深い判断がなされた。
アイスランド政府の立場ははっきりしている。
商標登録により、アイスランドフーズは「Iceland」を含む他人の標章を差し止めることができる。アイスランドは食品(魚、ビール、水など)でも有名な国であり、誰でも自由にこの「ICELAND」という文字を使用できなくてはならない。「Iceland Foods」は商標として識別力がなくなく、無効とならなくてはならない。また、アイスランドフーズの商標は誤解を招く(製品はアイスランドのものではないため)ものであり、アイスランドフーズが、「Iceland」を記述的に使用する第三者に対して訴訟を起こすこともでき、これは法的に認められている。
一方、アイスランドフーズは、「ICELAND」は50年以上前から知られている有名なスーパーマーケットチェーンの名前であり、アイスランドは食品でそれほど有名な国ではない。また、「ICELAND」が記述的であるというのであれば、その集中的な使用によって識別性を獲得したと反論した。
EUIPO(欧州連合知的財産庁)は、この問題に対して、まず地理的表示は対象の製品の原産地表示として名称が有名であることを要求していないことを示した。しかし、その事実は関連するもので、EUIPOは、アイスランドフーズの食品の輸出がかなり少ないと指摘し、「Iceland」が食品として有名とは言えず、「ICELAND」が商標保護の対象になるかどうかという問題において特に重要なのは、アイスランドという名前に対する公衆の認識と、アイスランドが(将来)食品と関連する可能性がどの程度あるかだと論じ、EUIPOは、アイスランドは著名であり、経済的な役割も果たしているとし、「Iceland」が対象の製品に関連して認識される可能性があると結論付けた。
したがって、EUIPOは、「ICELAND」は商標保護の対象にはならない名称であるとの判断を下した。EUIPOによると、例外は、地理的名称にあてはまる標章でも識別力を獲得した場合で、そのような地理的名称であればおそらく商標として登録が可能かもしれないとの認識を示したが、この識別力に関しても、アイスランドフーズは、説得力のある証拠をEUIPOに提出することはできなかった。そして、この問題は(今のところ)終結し、欧州商標「ICELAND」は無効となった。