商標制度の改善により、なんと1.85クロール・インドルピー(およそ26,500米ドル)もの損害賠償が、英国のワットマン・インターナショナル・リミテッド(以下、ワットマン)に認められた。類似商品の製造とは別に、類似するパッケージ形状のトレードドレス、体裁(get up)の商標権侵害が理由だ。これは、2019年2月1日にデリー高等裁判所が下した「Whatman International Limited 対 P Mehta&Ors」事件である。ワットマンはろ紙の事業を行っており、1類、9類、16類で「WHATMAN」商標をインドで登録している。
事件:
原告(ワットマン)は1740年に設立された。「WHATMAN」は姓であるが、商号と体裁の250年に亘る継続的使用により商標登録に必要な識別力を獲得し、白い背景に青い文字から構成される独特の色の組合せ、書体、体裁、レイアウトを使用してきた。
原告は、被告が異なる商品名ではあるが、同一の色の組合せ、体裁、トレードドレスで「WHATMAN」ろ紙を許可なく使用したと主張した。
原告はさらに、被告は常習的な侵害者であり、1992年以降原告の製品の模倣を継続的に行ってきており、2014年に裁判所から暫定的差止命令を勝ち取ったものの、被告が模倣品を継続的に販売していたため、初期調書(FIR:First Information Report)による摘発時に大量の模倣ろ紙が押収された。被告は、当該商品を2014年の暫定的差止命令以来販売していないと主張し、さらに恒久的差止命令を受ける用意があるとも述べた。原告は、被告がWHATMANろ紙の模倣品を製造販売しただけでなく、「HIRAL」、「SUN」、「LABSMAN」、「U-CHEM」、「U-CHEM」、「ACHME」という異なる商品名で同じ色の組合せ、レイアウト、外装の製品とパッケージを採用したとして、単なる恒久的差止命令だけでなく、懲罰的損害賠償も求めた。
決定:
Pratibha Singh判事は、恒久的差止命令の請求を妨げるものはなにもなく、本裁判の問題は、懲罰的損害賠償と民事訴訟法(CPC)Order 39規則2Aに基づく法廷侮辱罪を適用するかどうかであるとの認識を示した。
ろ紙に使用されたパッケージは、色の組合せ、レイアウト、外装において、「WHATMAN」ろ紙パッケージの実質的な複製であるとされ、さらに、「ACHME FILTERS」の商品名を使用している被告の一人のウェブサイトには、「当社のろ紙はWHATMAN同等の最高級品質」と具体的に述べられていた。これは、原告の製品として、または原告の製品と同等のものとして商品を売る被告の意図を示すものだ。さらに、地元の検査官は、原告の商品の実質的な模倣品であるろ紙を押収した。裁判所はさらに、被告が裁判所に宣誓の上で、「2018年に警察が行ったレイドは、地元の検査官が2014年に行ったものと同じではなく、原告による虚偽の申立てで行われたもので押収されたものは古い在庫だ」という不実の陳述を繰り返したという原告の主張を認めた。
裁判所は、「被告らは互いに協調して行動した」と結論付けた。彼らの懇願と陳述は記録と異なる。地方検査官の報告書は、Order 26規則13の規定に従って、訴訟証拠に含められる。懲罰的損害賠償の理由として、裁判所は、「Paresh Mehta氏と彼の家族は、刑事裁判所の命令を回避するためだけに、新しい組織を立ち上げた。新会社のM/s Maruti Chem Enterpriseは、Paresh Mehta氏の息子と妻によって運営されているが、この事実は争われていない。被告は、違法な侵害行為および裁判所の命令をおちょくっているかのようだ。繰り返された刑事訴訟や差押さえも抑止効果を及ぼさなかった。
不服従または差止命令の違反には、重大な結果がもたらさなければならない。厳格な措置が取られなければ、裁判所の命令は当事者に遵守されないであろう。そのような不服従は、CPC Order 39規則2Aに違反するだけでなく、1971年法の法廷侮辱法に該当する。
裁判所は、被告の計画的な行為は詐称通用(passing off)および金銭的利益を得るためのものであり、手口は「裁判所をだまし、裁判の裏をかく」という意図を示すもので、情状酌量の余地はないとして、被告の侵害、詐称通用、さらに虚偽の陳述に対して有罪判決を下した。
懲罰的損害賠償に関して、裁判所は「Rookes 対 Bernard」事件の規準や「ユニリーバ 対 レキット・ベンキーザー・インド」事件の最高裁判所の判例を引用した。規準によれば、裁判所が懲罰的損害賠償を認めるのは以下の3つのケースである。
- 公務員による抑圧的、恣意的または違法行為の場合
- 被告の不法行為が計算されたもので、損害が原告に支払われるべき補償を超える可能性がある場合
- 懲罰的損害賠償が法に規定されている場合
裁判所は、「被告の行為は不法と言わざるを得ず、被告は25年間に亘り故意に原告の商標権を侵害した。繰り返された訴訟に抑止効果はなかった。被告に悪びれた様子はなく、反省の意は示されていない。」と判じた。
なお、法廷侮辱罪に対しての処分は決定していないが認められる公算が高いと考えられる。
本文は こちら (Exemplary damages awarded for trademark infringement and counterfeiting)