レッドブル(Red Bull)は、「翼」の保護には成功したが、青色と銀色の組合せを保護する戦いで敗北を喫した。レッドブルが登録した商標の色彩の組合せが十分に「明瞭かつ正確」ではないため商標として機能しないとの判断をEU一般裁判所が下したのち、7月29日に下したEU司法裁判所の判断はレッドブルに最終的な打撃を与えることとなった。Casper Hemelrijkが判決の概要を解説する。
以前にも指摘したことだが、色彩の組合せを商標として保護することは容易なことではない。そのような標章を登録するための閾値は、公共の利益と自由競争の観点から、組織や個人が色彩または色彩の組合せを容易に独占できないように、意図的に高く設定されている。
原則として、色彩(以降、組合せも含む)は、使用を通じて識別力を獲得した場合に商標として登録できる。これは、関係者が特定の商品やサービスの商標を特定の会社に由来するものとして認識し始めたことを意味する。さらに、色彩は明確で正確な方法で表現する必要がある。
レッドブルの色彩商標
レッドブルは、EUIPO(欧州連合知的財産庁)に2色から成る商標を登録した。EUに登録した最初の色彩商標は2002年に32類のエナジードリンクを指定して出願したものだ。商標の説明によると、商標は青色(RAL 5002)と銀色(RAL 9006)の組合せを保護しようとしたもので、色の割合は「約50%-50%」としている(Protection is claimed for the colours blue (RAL 5002) and silver (RAL 9006).The ratio of the colours is approximately 50% – 50%.)。
2010年には、同様の色彩の組合せ商標を同じ指定商品に対して出願しており、商標の説明には、色彩は青色(Pantone 2747 C)と銀色(Pantone 877 C)とし、「2つ色は等しい割合で並列に配置される(The two colours will be applied in equal proportion and juxtaposed to each other.)」と記されている。
レッドブルが商標出願でカラーコードを指定したことは正解だった。レッドブルはまた、EU商標指令2015/2436号発行前の登録要件であるグラフィック表示(写真右)も提出した。しかし、2017年の判決でEU一般裁判所は、レッドブルの商標は色彩の組合せを「明確かつ正確」な方法で表現するという要件を満たす事が出来なかったとの判断を下した。
「明確かつ正確」である必要性
上記のように、最初のEU商標出願では、色彩の比率が約50%-50%であるとした。EU一般裁判所は、色彩のさまざまな配置を考慮に入れて、グラフィック表現の正確さの欠如を補強するために「約(approximately)」という言葉が入っていることを指摘した。
2番目の出願では、レッドブルは「2つ色は等しい割合で並列に配置される」と記載しているが、EU一般裁判所は、並列な配置とは、同じ割合である可能性があるものの、異なるイメージやレイアウトを生じさせて異なる形態をとることもあると指摘した。したがって、2番目の登録出願の説明も十分に明確で正確ではないという判断となった。
使用による識別力の証明
レッドブルは、色彩の組合せが使用を通じて識別力を獲得したという主張を裏付ける証拠を提出した。しかし、証拠は、商標がグラフィック表示で示される2色の垂直な並置とはかなり異なる方法で再現されていることを示していた。
先日の判決(7月29日)で、EU司法裁判所は、EU一般裁判所の判断を支持しレッドブルの控訴を棄却し、事実上2色の商標を無効と宣言した。レッドブルが今年初めに上記の要件を満たす新しい色彩商標を登録したことから、レッドブルはこの判決を予期していたかもしれない。そのため、以前登録した2つの色彩商標に対して無効の判決が出たにもかかわらず、同社は引き続き特定の青色と銀色の色彩の組み合わせの権利を主張することができる。
判決では、登録後の商標の使用監視を含め、色彩商標に関する出願戦略の重要性が改めて強調されている。