標識は、それが使用されている商品またはサービスを説明するものである場合、またはそれが公共の秩序に反する場合、商標として登録することはできない。図形商標「MaK Tea」は、これら両方の理由で登録を拒絶された。NovagraafのCasper Hemelrijkが解説する。
スペインの飲料メーカー、Natur Drinksは、3つの区分で「MaK Tea(写真右下)」を保護するためにEU商標(EUTM)の登録を申請した。この出願は、マクドナルドの一連の「Mc」商標と混同する虞があるという理由で、マクドナルドによって異議が申し立てられた。
マックの異議申立て
欧州知的財産庁(EUIPO)の異議部は、「Tea:茶」という要素は識別性の要件を満たしていないため、「MaK」と「Mc」の類似点と相違点に基づいて、混同の虞の問題を審査した。両方の記号の発音が異なるのに対して、唯一の類似性は両方の要素の最初の文字だけであり、 「Mc」はスコットランド人やアイルランド人の姓に多く存在しており、両商標が観念的に異なることから、異議部は混同の虞はないと判断した。
マクドナルドはEUIPOの審判部に上訴し、審判部は出願審査に差し戻した。
審判部はEUTM出願に絶対的拒絶理由が適応される可能性があるとき、審査部に審査を差し戻すことができ、再審査となる。EUTM出願に関連する絶対的な拒絶理由の1つが満たされるとEUIPOは商標登録を拒絶する。
絶対的な拒絶理由
商標が指定する商品・サービスのもつ特徴を示しているか、あるいは商品・サービスを説明するものである場合は絶対的な拒絶理由となる。スラブ語で「MaK」はケシを意味し、その種子はお茶の原料(すなわちお茶の特徴)になる。「MaK Tea」という標識は、保護しようとしている商品、つまりケシのお茶を表わすことになる。
また、もう一つの絶対的な拒絶理由には、商標が公共の秩序や一般に是認された道徳規範に反するものがある。この拒絶理由が適応されることはあまりない。しかし、商標が麻薬の宣伝や販売に使用されるような状況で適用される例はある。
ある種のケシは麻薬で使用される、例えば薬用、快楽を得る目的の麻薬、ヘロインを作るためのものだ。これらの麻薬は種子からではなく種子のさやから作られる。また、種子は微量のアヘンを含んでいる。
ケシ茶には麻薬の効果がないにもかかわらず、EUIPOの審査部はケシの実を麻薬と見なし、麻薬を含む可能性のあるケシの実を宣伝し、販売することは公共の秩序に反するため、出願された商標は好ましいものではないと判断した。ケシの実がEU加盟国の中で合法的に販売されるという事実もEUIPOの考えを変えさせることはなかった。
マクドナルドは審判請求で勝ち取ったわけではないが、「Mak Tea」の商標が拒絶されたことで目的を果たすことにはなった。