EUの年間商標出願の中で、音、匂い、動きなどの非伝統的な商標出願が占める割合はまだ少ないが、重要性は増し始めている。
従来のビジネスも、競合他社との差別化を図るために、色彩、匂い、ジングルなどのかつてない形態のブランディングを求めているため、知的財産の専門家は、企業と協力して、これらの重要な変革をサポートするために必要な法的確実性を提供しなければならない。
はじめに
欧州連合商標商標(EUTM)の登録基準に「グラフィック表現」の要件が含まれなくなったため、少なくとも理論上は、適切な形式であれば標識を保護するために商標を登録することができる。これにより、知的財産の所有者は、「明確かつ正確(clear and precise)」に表現でき、識別力などの一般的要件を満たせば、非伝統的な標識(形状、音、匂い、ホログラム、マルチメディアなど)を登録できる。
ただし、このような登録には、主観的および客観的パラメータを明確にするという観点から、克服する必要のある課題がある。登録基準に満たした、あるいは満たさなかった非伝統的商標から何を学べるだろうか?
数字から見るEU商標出願
先月ダブリンで開催された2019年MARQUES年次大会で、EUIPO(欧州連合知的財産庁)のICLAD(国際協力法務)副部長のDimitris Botis氏は、欧州商標規制の改正および指令以降の非伝統的商標の登録概要を示した。
それによると、2017年10月1日以降に出願された約300,000件の商標のうち約1,400件のみが非伝統的商標で、その中には以下のものが含まれている。
* 66件の音商標、うち34件は登録済み
* 64件の動きの商標、うち29件は登録済み
* 31件のマルチメディア商標、うち17件が登録済み
* 3件のホログラム商標、うち2件が登録済み
Botis氏はまた、登録および拒絶理由例についても言及した。
* 音商標:長すぎて(39秒)複雑なもの、ありふれたもの(エンジン音など)、缶詰が開けられる音などは識別力の欠如を理由に拒絶された。登録例には、Barcelona Football Club(バルセロナ・フットボール・クラブ)によって登録された「Barca(バルサ)」という言葉の音がある。
* 動きの商標は、商品やその機能に関連しすぎている(Bang&Olufsenによる手ぶり)、または説明が多すぎる(デザートをパッケージから取り出すやり方)ものは拒絶された。
* 純粋に販促目的のマルチメディア商標は拒絶されたが、商品やサービスに直接関連しない識別力のある商標で登録されたものもある。この例には、ボーダフォンの「Ready」マルチメディア商標や、ヨーテボリ持続可能発展賞(Gothenburg Sustainability Award)の「Win Win」ロゴがある。
不確実な状況
この分野の不確実性は、先進的で革新的な商標登録により知的財産の保護を目論む大企業の一部に深刻な欲求不満をもたらした。
しかしながら、これらの新しいブランド・タイプの役割は大きくなる可能性が高い。潜在意識に働きかける音、匂い、ホログラムやその他の非伝統的な形態のブランドが、その分野でのブランドリーダーとして市場全体の大きな商業的利益を提供する可能性を秘めている。
法律はそれらを保護する働きを提供することができる。