NASAは、ナチス・ドイツを連想させると大きな反発を受けて天体の名前を変更した。
この天体は、これまで宇宙探査機が訪れた中で最も地球から遠い天体で、海王星から約16億キロメートル離れたカイパーベルト(訳者注:太陽系の海王星軌道より外側の黄道面付近にある天体が密集した穴の空いた円盤状の領域)の軌道を周回している。今年1月にNASAの無人探査機「ニュー・ホライズンズ」によって観測され、雪だるまのような形状であることが分かった。
この天体の識別名は「2014 MU69」だが、NASAのチームは、欧州の中世文学に登場する見知らぬ世界に存在する伝説の極北の地「トゥーレ」にちなみ「ウルティマ・トゥーレ(Ultima Thule)」という愛称を付けた。
ところが、トゥーレという言葉は20世紀初めにドイツの極右カルト集団が、「アーリア人」の住む古代の伝説的極北の国の意味で使われていたことから、この愛称は激しい反発を招いた。(訳者注:トゥーレ協会は、アドルフ・ヒトラーが党首を務めたナチ党の母体)
NASAは、ウルティマ・トゥーレの命名に十分なデューデリジェンスが行われなかった、と謝罪した。結局、この天体は、ネイティブアメリカンの言葉で「空」を意味する「Arrokoth」に変更された。