EU一般裁判所で最近争われた事件(Santa Conte対EUIPO、事件番号T-683/18)で、裁判所は、CANNABIS(大麻)という文字と大麻草の葉(cannabis leaf)の描写を含む商標について、EUにおいてどのような場合に登録可能となるのかの判断を求められた。
緑色の大麻草の葉を背景に「CANNABIS」という文字と「CANNABIS」の下に小さく「STORE AMSTERDAM」という文字で構成される結合商標がEU商標出願に関連する事件(商標番号:16176968)である。
この商標は、飲食物提供のサービスに加えて、菓子やソフトドリンクを含む食品や飲料などを指定して出願された。この出願商標は、大麻や特にカンナビジオール(大麻草に含まれる成分)を含む製品は明示的に含まれていない。
EUIPO(欧州連合知的財産庁)は、当該商標が公共の秩序に反する(contrary to public policy)という理由で登録を拒絶した。Conte氏はこの査定を不服として控訴したが、一般裁判所はEUIPOの決定を支持した。
判決を下すにあたり、EU一般裁判所は、当該商標の要部の組合せが、EU加盟国の多くで違法としている麻薬成分である「CANNABIS」を消費者が想起する役割を果たすものと認定した。それぞれの要素だけで構成される商標の登録を求める商標出願であれば、問題があると見なされないかもしれないが、この商標の場合、全体的にみると、登録が認められた他の商標より、平均的な消費者に麻薬成分である「CANNABIS」に関連する商標であると示唆するために、公共の秩序に反すると考えられた。特に、アムステルダムの街は、店舗で大麻由来の麻薬が売られていることで知られており、アムステルダムにある店舗への関連性を商標の中に含めることでより明確になるものと見なされた。
麻薬成分としての大麻は多くのEU加盟国で違法であるため、そのような物質を広告宣伝することを目的とする商標は、違法な商品を指定しておらず、もっぱら合法的な商品・サービスのみを指定しているという事実にもかかわらず、公共の秩序に反すると見なされ、その結果、Conte氏の商標登録は拒絶された。
このケースは、CBD(カンナビジオールの略称)を含む合法大麻製品の販売や販促に従事している人にとって現実味を帯びたものとなった。このような製品の販売が世界中の多くの国で合法となっているが、今回の判決は、そのような製品に関連して使用する商標の採用には注意が必要であることを示している。特に、商標権者は商標がどのような印象を与えるかを慎重に検討する必要がある。平均的な消費者がCANNABIS(大麻)を麻薬成分と見なす場合、商標は公共の秩序に反すると見なされる可能性がある。
したがって、CBD製品に関連する新しい商標、つまりCANNABIS(大麻)という文字や大麻草の葉の描写などを含む商標の採用を検討する場合、事前に法的な助言をとることを勧めたい。
本文は こちら (When is a Cannabis Trade Mark contrary to public policy?)