2019年8月1日に掲載したNovagrrafの記事「EU:「ゲーテなんてクソくらえ」、公共の秩序と道徳規範に関する判断」に関して、2020年2月27日にEU司法裁判所(CJEU)は法務官(advocate general)の意見に従う決定を下した。その結果、EUIPO(欧州連合知的財産庁)は、公共の秩序と道徳規範を評価する際により多くの努力が求められることになった。
本文記事は こちら (Public policy, morality and Johann Wolfgang von Goethe)
2019年8月1日に掲載した事件の概要
コメディ映画「Fack juGöthe(ゲーテなんてクソくらえ)」で成功した制作会社は映画のタイトルを文字商標として登録しようとしたが、EUIPOはタイトル「Fack juGöthe」がドイツの文豪ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテを侮辱しているとして、公共の秩序又は一般に是認された道徳規範に反するものという理由で商標登録を拒絶し、EUの一般裁判所もその決定を支持した。
制作会社は、EUIPOに商標登録を拒絶された後、最終的にCJEUの判断を求めた。
CJEUの係属事件では、法務官(advocate general)が、事件に関して公平で独立した意見を述べる事が出来る。この意見に拘束力はないが、大きな影響力があり、判事がこの意見に従う判決を下すことも多い。本事件でのBobek法務官の意見は、一般裁判所の決定に反し、制作会社に有利なものとなった。
Bobek法務官の意見;
公共の秩序と一般に是認された道徳規範の主な違いは基準と価値観にあり、公共の秩序は公的な機関によって決められた基準と価値観によるが、道徳規範の規準は社会的な判断によって決まる。これらの根拠が重なる可能性はあるが、それらは独自に立証されなければならない。従って、公共の秩序に反するかは客観的に決めることができ、公共の秩序を理由とする商標登録の拒絶は、法律や具体的な政策または公式な声明を参考にして決定されるべきもので、それには、法的確実性が担保されなければならない。
道徳的見地から、映画のタイトルが不道徳だという議論は何もなく、この映画はドイツでとても人気が出たことが、本標章が一般に是認された道徳の規範内であることを示している。表現の自由の保護は商標法の目的ではないかもしれないが、人権法によって保護されているため、人としての基本的な権利であり、表現の自由をまったく考慮しないという決定においてEUIPOと一般裁判所は誤った。
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