2020-04-14

韓国:不正競争防止法における一般条項の適用基準を提示した大法院判決 - Kim & Chang

最近大法院が、2件の事件において「他人の相当な投資又は労力により作成された成果等を無断で使用することにより、経済的利益を侵害する行為」を禁止する不正競争防止法における一般条項[第2条第1号(ル)目]を適用して権利者を保護し、一般条項の適用要件に関する具体的な法理を初めて提示しました。
 
* 出版社が人気アイドルグループ防弾少年団(BTS)のメンバーのポストカード/ポスターが入った写真集を所属芸能事務所の同意なしに無断で発刊した行為が問題となった事案において、①BTSの名称、所属メンバーの氏名、写真などは顧客吸引力のあるもので、相当な投資や労力により作成された成果に該当し、②通常の報道水準を超える方法でBTSの写真及び映像を多量に掲載して特別付録を制作したにもかかわらず、当該芸能人や所属芸能事務所に同意を求めたり、対価を支払わなかったのは、公正な商取引慣行や競争秩序に反する方法により他人の成果を利用したものなので、不正競争防止法における一般条項が禁止する行為に該当すると判断(大法院2020年3月26日付2019マ6525決定)
 
* スクリーンゴルフ場を運営する被告がゴルフ場のゴルフコースを所有者である原告らの同意なしに無断で3Dで具現して使用した行為が問題になった事案において、①ゴルフ場のゴルフコースは、原告らの相当な投資や労力により作成されて維持されてきた成果であり、②被告は原告らと競争関係にあるため、不正競争防止法における一般条項が禁止する行為に該当すると判断(大法院2020年3月 26日言渡2016ダ276467判決)。
 
大法院は、上記の両事件において、不正競争防止法における一般条項は補充的一般条項であるとして、その要件を判断するにあたって考慮しなければならない具体的な基準を提示しました。すなわち、大法院は①保護対象である「成果」に該当するかどうかは、その成果が持つ名声、経済的価値、化体された顧客吸引力、当該分野で占める割合、競争力等を考慮し、②「相当な投資や労力」により作成されたものであるかどうかは、投資、労力の内容、程度を関連産業分野の慣行及び実態を考慮して判断し、③成果の無断使用により「他人の経済的利益を侵害」するというのは、何人も自由に利用可能な公共領域に属さない保護価値のある利益を侵害することを意味し、④公正な商取引慣行や競争秩序に反する方法に該当するかどうかは、権利者と侵害者の現在または将来の競争関係、成果が侵害者の商品/サービスにより市場で代替される可能性、需要者に知られている程度及び混同の可能性等を考慮しなければならないと明らかにしました。
 
不正競争防止法における一般条項は、以前、限定的に列挙された不正競争行為の類型だけでは技術の発展と社会環境の変化による新しく多様な類型の不正競争行為を規制することは難しい限界を克服すべく導入されましたが、保護要件が抽象的・包括的で、下級審判決の判断において具体的で一貫した判断基準を見出すことが難しいという意見も提起されました。
 
大法院は、今回の判決を通じて不正競争防止法における一般条項を適用して新しい類型の侵害行為から権利者を保護し、その適用要件を判断するにあたって考慮しなければならない事項に対する具体的な基準を提示することで、今後、裁判所の判断の予測可能性を高めました。
 
今後、権利者としては、伝統的な知的財産権では救済を受けることが難しい類型の行為に対して大法院が提示した基準を参考にし、不正競争防止法における一般条項を通じた権利救済の可能性を積極的に検討してみる必要があります。