2020-06-23

米国、EU:「Booking.com」は「.com」によって識別力を獲得できたか? - Novagraaf

原則として、企業は提供する商品またはサービスに直接関連する一般的な用語を商標として登録することはできない。それでは、Booking.comなどのドメイン名の場合はどうなのだろうか?
進行中の案件で、Booking.com(訳者注:オランダ・アムステルダムに本拠地を置く、ホテル・旅館等の宿泊施設を中心とするオンライン予約サービスを運営する旅行会社)は、米国でその有名なドメイン名を商標として登録するための手続きを進めている。
Booking.comは、2012年に「Booking.com」など4件の商標をUSPTO(米国特許商標庁)に出願した。USPTOは、「Booking(予約)」という用語が旅行業では1つの意味しか持たないため、一般的且つセカンダリー・ミーニングに欠けるという理由で登録を拒絶した。その後、Booking.comはこの査定を不服として上訴し、一般的な用語でもドットコム(.com)を付けることでブランド名が商標としての登録要件を満たすかどうかの議論を提起した。現在、この問題は米国最高裁判所に持ちこまれており、間もなく判決が下されるものと期待されている。

米国における普通名称の原則
議論の焦点は、普通名称にドットコム(.com)を付加することでセカンダリー・ミーニングを獲得し、業界の一般的な用語から識別性を得るのに十分かどうかだ。
USPTOが事件を米国最高裁判所で審理するように要求したとき、USPTOは「確立された商標法の原則に反する」商標の登録を認めることになると主張した。「company」の前に普通名称を付けただけの商標登録が認められないのは、単に「company」が企業や法人であることを示しているからで、普通名称にドットコム(.com)を付加する場合も、「同じ原則が適用され[…]、オンラインビジネスを運営していることのみを示している」。
USPTOはまた、会社が消費者にどの程度認識されているかに関係なく、競合他社がこれらの用語を使用できなくなり、商品やサービスを正確に説明するドメイン名を使用できなくなるため、普通名称を保護すべきではないと主張した。
出願人の反論は、準拠法はドットコム(.com)を付加した普通名称の登録を禁止していないというもので、出願人がその主張を裏付ける証拠を持っていれば、「関連する消費者が商品またはサービスのカテゴリー名称全体を商標として理解する」かどうかの評価は有効であると主張した。
ドメイン名に関する懸念に関して、「競合他社は記述的商標の所有者が直面する困難に気づいており、「booking」を含む他のドメイン名と共存できると信じていると出願人もこの問題に触れている。 

EUの視点
EUIPO(欧州連合知的財産庁)は以前より、特定の状況下での普通名称の商標登録にある程度寛大だった。2007年にBooking.comが「Booking.com」のロゴ化(stylised)した商標を出願したときには商標は識別性の点で問題にならなかった。 
ただし、Booking.comが2010年に文字商標「Booking.com」を出願したとき、識別力がないという絶対的理由で登録を拒絶された(EU規則2017/1001の第7条)。EUIPOは、拒絶理由において米国のアプローチに同調し、「booking」という文字が標準的な動名詞であり、ドットコム(.com)の「com」は単にインターネットにおけるアドレス階層を表すものであり、ドメイン名は商用Webサイトとしての存在を示すものだ。したがって、商標に独特の構造はなく、消費者がインターネットを介して予約する方法を指すために使用される用語であると信じさせることができるとの判断を示した。
それに対して、出願人は商標が保護を求める市場で確立されたブランドであり、識別力を獲得していると主張した。出願人は、2006年から2010年までの出願時に、商標が長年使用されていることを示す広範な証拠を提出した。この証拠により、EUIPOは商標が実際に識別力を獲得したため登録することができるとの判断に至った。
それ以来、EUIPOは普通名称の商標出願に対するスタンスを変更したように見える。2015年に、標準的な文字デザインや手書きで表される普通名称は十分に識別力があるとは見なされないという記述的商標の使用に関するガイドラインをリリースし、さらに、普通名称と図形が結合している場合、図形要素を抜いても商標に識別力がなければならないとした。EUIPOはまた、普通名称とともに使用された句読点やその他の記号の使用に関して、これらもまた、商標に識別力を生じさせないとの解説を加えた。

これらの厳しいガイドラインは、EUIPOが普通名称の商標登録に関する制限を強化していることを示している。したがって、「Booking.com」商標が今日出願された場合、それが登録になる可能性はほとんどないと思われる。米国の最高裁判所が同様の方針をとるかどうかを見るにはもう少し時間がかかりそうだ。

本文は こちら (Booking.com: Does a dot.com make a brand name distinctive?)