2020-07-27

ユーラシア商標:EAEUの商標保護制度構築にあと一歩 - Gorodissky & Partners

 2020年2月3日に、モスクワに於いてユーラシア経済連合の商標、サービスマークおよび商品の原産地名称に関する条約が調印された。

 この条約は、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス及びロシアのユーラシア経済連合の領土で商標保護を受けることができると規定している。条約によると、これらの国における商標の法的保護は、ユーラシア連合商標(EAEU商標)としての単一登録として付与される。EAEU商標の登録手続きはEAEU加盟国商標部門の共同作業で行われ、加盟国間共通の商標部門設立を想定していない。 

 EAEU商標として保護を受けるためには、EAEU加盟国の特許庁に出願する必要がある。出願人は、いずれの加盟国官庁を選んだ場合でも、共通要件に従い出願書類はロシア語で記載しなければならない。
 出願商標の方式審査は出願の受付官庁のみで行われ、方式審査後に公式ウェブサイトで公開され、他の特許庁に出願書類が送付される。公開後3か月以内に、利害関係者は商標の登録に異議を申立てることができ、請求を受けた名称の審査中に加盟国の特許庁で異議申立てが検討される。
 出願の受付官庁から加盟国の特許庁に出願書類が送付された後6か月間に加盟国特許庁は審査を行い、EAEU商標として登録の拒絶理由を受付官庁に通知しなければならない。指定期間内に対応しない場合、拒絶理由を通知する機会を失う。
 加盟国特許庁の審査結果に基づき、受付官庁はEAEU商標の登録を認めるか、出願人に拒絶理由を通知するかを決定する。出願人は拒絶理由が通知された場合、それぞれの国で利用可能な手続きに従って不服を申し立てることができる。 
登録が認められると、受付官庁はEAEU商標の登録簿に記載し商標登録証明書を発行する。証明書は出願日から10年間有効で10年ごとに更新できる。

 同一または部分的に一致する指定商品で、同一の商標を同じ人物がすべての加盟国で登録している場合、条約発効後、商標権者は何れの加盟国特許庁でEUAU商標の登録証明書を請求することができる。証明書は,加盟国の権利存続期間中に発効され、国内登録の満了まで有効となる。この場合,EAEU商標の登録についてと国内登録のEAEU登録置換えについて国内登録機関に登録される。 

 外国の出願人はどの加盟国の特許庁でも出願の受付官庁として選択できる。
EAEU商標の登録に対する異議申立ては、加盟国の管轄官庁において、条約に規定される理由に基づいて、その国の国内手続に従う必要がある。
 EAEU商標が無効となった場合、商標権者は無効となったEAEU商標登録の優先日を維持したまま、国内出願を行うことができる。
 EAEU商標は、3年間の不使用を理由に取消すことができる。また、EAEU商標の保護を維持するためには、少なくとも1つの加盟国の領土内で使用されていれば十分であると考えられている。
 加盟国領域内におけるEAEU商標の独占的権利の侵害に関する紛争は、その国の国内法に基づいて裁かれる。手続きは国内商標の権利侵害の場合と同様となる。

 また、この条約はEAEU加盟国の領域における原産地名称の保護に関しても規定している。現在、EAEU加盟国は保護された原産地名称の国別登録簿を保持しており、条約は条約締結前に加盟国で登録された原産地名称のリストを交換すると規定している。リスト交換後、権利者は原産地名称をユーラシア連合の原産地名称統一登録簿に記載し、その使用権証明書を発行することを各国特許庁に請求できる。  
 ユーラシア連合原産地名称の出願要件は条約で定められている。加盟国の出願人は、連合の原産地名称を登録し使用権を得るために自国の特許庁に出願することができる。外国の出願人はどの加盟国の特許庁でも出願の受付官庁として選択できる。
 ユーラシア連合原産地名称の出願審査は,出願の受付官庁のある国の法律で定められる。審査結果が肯定的であれば、受付官庁は原産地名称を統一登録簿に登録し、その使用権の証明書を発行する。条約は、加盟国の特許庁で行われる連合原産地名称の出願審査について規定していない。 

 この条約は、ユーラシア経済委員会(EEC: Eurasian Economic Commission)が、加盟国から必要な国内手続き実施に関する書面による通知を受領した日に発効する。

本文は こちら (ANOTHER STEP TOWARDS CREATING A REGIONAL TRADEMARK PROTECTION SYSTEM ACROSS EURASIA)