2020-10-08

制裁対象国における商標保護 - NOVAGRAAF

国連安全保障理事会や米国やEUなどの国や地域から、経済制裁などの制限措置がとられた場合、制裁対象国の商標権はどうなるのだろうか。Frederik Jocqué が解説する。

経済・通商制裁が行われた場合、制裁を受けた国の内外を問わず、知的財産権者に影響を与えることになる。制裁の目的によっては、金融取引を禁止したり、輸出入に制限を加えたりすることもある。そのため、制裁対象国で商標登録を受けている企業にとっての最初の影響は、制裁対象国における商品の販売やサービスの提供が、不可能ではないにせよ困難になることだ。

第二に、登録商標の使用義務との関係がある。ほとんどの国では、商標登録されている場合、登録商標を一定期間(多くは3年か5年)登録した態様で使用しなければならない。使用しないと第三者による不使用取消申請の対象となり、当局による商標の自動取消の対象となることもある。また、国によっては使用証拠を提出できなければ商標登録を更新することができない場合もある。このため、外国の商標権者が経済・通商制裁により商標登録が危険にさらされる可能性がある。

制裁対象国と使用義務の例
制裁対象国における使用義務の有無を確認することが重要だ。商標の不使用取消が当局によって自動的に課されるのか、第三者の行為によってのみ課されるのか、商標更新申請時に使用証拠が要求されるのか、そのような要求に対して、経済・通商制裁がする不可抗力として認められるのか、などを確認することが重要だ。

以下に、制裁を受けている国と、それぞれの国における商標権への影響を紹介する。
イラン
商標登録は、登録後3年間連続して使用されていない場合、不使用取消の対象となる。しかし、更新時などに使用証拠を求められることがないため、不使用取消申請は第三者によるものしかない。第三者により不使用取消が申立てられた場合、イランが制裁対象国であることを不可抗力として主張することができるが、これについての明確な規定があるわけではない。

スーダン
商標登録は、登録日から5年間連続して使用されていない場合、不使用取消の対象となる。しかし、更新時などに使用証拠を求められることがないため、不使用取消申請は第三者によるものしかない。第三者による不使用取消申請(裁判所に直接提訴)の場合、スーダンが制裁対象国であるという抗弁が認められるかどうかは、裁判官の裁量に委ねられる。

シリア
商標登録は、登録後3年間連続して使用されていない場合、不使用取消の対象となる。しかし、更新時などに使用証拠を求められることがないため、不使用取消申請は第三者によるものしかない。第三者による不使用取消申請(裁判所に直接提訴)の場合、制裁が国連ではなく、米国などの特定の国によるものであるため、シリアの裁判所は制裁対象国であるという抗弁を受け入れない。

制裁対象国での商業活動を計画している場合でも、すでにその地域で商標登録をしている場合でも、商標弁護士と相談して、貿易障壁に照らして可能な限り最高の保護を確保し、維持することが重要だ。

本文は こちら (Sanctioned countries and trademark protection)