2020-12-22

韓国商標法/デザイン保護法/不正競争防止法、損害額算定方式改善 - Kim & Chang

– 既導入された3倍賠償制度と併せて強力な知財権保護期待 –
 
このほど韓国では、権利者の生産能力を超えて販売された侵害品に対しても損害賠償を受けられるようにする内容の商標法、デザイン保護法、不正競争防止および営業秘密保護に関する法律(以下「不正競争防止法」)一部改正案が2020年12月22日に公布された。同改正案は公布後6ヶ月が経過した2021年6月23日から施行される予定である。
 
韓国の商標法・デザイン保護法・不正競争防止法は、侵害者による権利侵害行為があった場合、侵害者の商品の譲渡数量に、権利者の単位数量当たりの利益の額を乗じた金額を損害額とすることができると規定している。これは権利者の損害立証が現実的に困難であるという点を勘案したものである。しかし従来の損害額算定方式は権利者の生産能力を限度とするよう規定していたため、侵害行為が大規模に行われた場合、権利者の生産能力を超える販売量に対しては損害賠償を受けることができなかった。したがって権利者の生産能力が相対的に小規模であるときは、侵害行為が大規模に行われたとしても実損害より低い額の賠償を受けることになるケースが多く、侵害者の立場としては正常な使用権契約を結ぶより侵害行為を行うほうがむしろ利益になるという不合理な状況が続いていた。
 
このような状況の中で、より強力な懲罰的損害賠償制度の必要性が論じられるようになり、その結果、最近韓国では「3倍賠償制度(*1)」が導入されたものの、権利者を十分に保護するには足りないという指摘がされてきた。これを受け、2020年6月9日に公布され同年12月10日から施行されている韓国改正特許法では、特許権者の生産能力を超える侵害者の販売数量に対しては合理的なロイヤリティ相当額を追加して賠償を受けることができるという条項が新設された。大規模な侵害行為による弊害を抑制し、損害賠償額をより現実化する方向に損害額算定方式が改善されたものであるが、今回商標法・デザイン保護法・不正競争防止法改正案でも、これと同じ内容の規定が反映されたものである。
 
例えば、権利者の製品生産能力が100個で、侵害者が侵害製品1万個を販売した場合、従来の規定によれば権利者は単位当たりの利益額に100を乗じた金額のみ請求することができた。しかし今回の改正案による場合、権利者は単位当たりの利益額に100を乗じた金額だけでなく、権利者の生産能力を超えて販売された9,900個に対しても、合理的なロイヤリティ相当額を追加で請求できることになる。
 
3倍賠償制度とともに上記の新しい損害賠償算定基準が適用されれば、権利者は今後悪意的または故意に行われる大規模な侵害行為から自らの知識財産権をより強力に保護できるようになることが期待される。
 
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*1 故意による特許権、実用新案権、商標権、デザイン権および営業秘密の侵害時、損害と認められる金額の最大3倍まで賠償を科すことができるようにする制度で、特許権、実用新案権、不正競争防止法上の営業秘密の侵害の場合は2019年7月9日から、商標権、デザイン権の侵害の場合は2020年10月20日から導入。