TikTok、ボーラー、ピエール・カルダンの共通点は、最近混同の虞のある商標の出願をされた有名ブランドだというところにある。TikTokのロゴは中国人の男性が衣類を指定して、「BALR」はJ&B Limitedがタバコを指定して、手書きの「Pierre Cardin」はスイスの会社が照明器具を指定して、それぞれ欧州商標として出願した。
有名ブランドでもこの手の商標出願の登録を阻止するのは結構大変な作業だ。実際、上記3件の異議申立ても異なる結果となった。TikTokはロゴの登録の阻止に成功し、ボーラーは失敗した。そして、ピエール・カルダンの異議申立ては認められた。
どうしてこのような違いが生じたのだろうか?TikTokは、異議申立の根拠を混同の虞に限定し、商標の名声に基づく、より広い保護を求めなかった。混同の虞は、類似する商品・サービスがある場合にのみ適用される。そして、確かに類似性は認められたが、これがすべての商品・サービスに適用されるわけではない。
混同の虞に加えて、ボーラーはブランドの名声も理由とした。衣類とタバコは類似する商品ではないので、混同の虞は当然のことながら根拠としてあまり期待することができない。自社ブランドが著名であることを主張するのであれば、それを証明しなければならない。ボーラーはそのことを忘れ、異議申立て請求はきっぱりと却下された。
最後のピエール・カルダンは、照明器具を指定する文字商標をはじめ、たくさんの先行する権利を持っていた。異議申立ての根拠となる商標は、使用要件の対象外で商品がほぼ同一となるブランドだったためか、かなり簡単に異議が認められた。
結局、多くの商品やサービスを指定して商標を出願し、これを定期的に再出願することで使用要件を回避することが最善であるということもできる。しかし、もはやそういうことでもない。定期的に商標を再出願すると、悪意があるとみなされる可能性もある。そこで問題となるのは、ピエール・カルダンがこれまでに何度かこの商標を再出願して登録しているが、照明器具を指定する商標の新たな登録に正当な根拠があるかどうかということになる。
結論としては、名声は人生を楽にしてくれるが、それ以上に難しいこともある。有名になったらなったで、自分の名声を証明する必要がでてくるからだ。