2021-02-16

EU:ビーガン向け食品ブランドに新たな可能性:Oatlyのスローガン商標の成功 - Novagraaf

 乳製品の代替品を製造するスウェーデンの食品ブランド、Oatly(オートリー)は、「It’s like milk, but made for humans」というスローガンに対する異議申立てを乗り越え、EUで植物由来の商標を保護するビーガン(菜食主義者)やベジタリアンのブランドに新たな可能性をもたらした。 
 以前にも触れたが、乳製品を含む「牛乳」、「クリーム」、「チーズ」、「バター」、「ヨーグルト」として販売される製品に義務付けるEUの規則により、植物由来の製品は商標保護に困難な問題があった。

 2017年6月の判決でCJEU(欧州司法裁判所)は、「純粋に植物由来の製品は、原則として、EU法で畜産物用表示を付けて販売することはできない」と判じた。 
 しかし、植物由来の乳製品や肉の代替品の人気が高まるにつれ、ビーガン向け食品の商標登録数も増加しており、企業が自社の製品ラインの商標登録を成功させる方法を模索する中で、注目度の高い戦いが繰り広げられた。Oatlyは、迷路を抜け出す道を見つけたのかもしれない。

一部拒絶査定への不服申立て
 1990年代に発売されたが、Oatlyが公衆に認識されるようになったのは、植物由来のフラットホワイトやカプチーノの代替品となった近年になってからだ。
 2019年3月、Oatlyは、18類(バッグ)、25類(衣類)、29類(食品)、30類(食品)、32類(飲料)の商品(乳製品代替食品および飲料を含む)を指定して、広告スローガン「It’s like milk, but made for humans」を商標として登録するためにEUIPOに出願した。該商標は、18類と25類の商品だけでなく、果物、野菜、穀物の加工品、水飲料を含む29類、30類、32類の多くの商品に対する登録は認められたが、29類、30類、32類の残りの商品に対する登録は拒絶された。
 Oatlyの不服申立てに対して、EUIPO(欧州連合知的財産庁)審判部は、標章の前半部分の「It’s like milk」は販売される製品が牛乳の代替品かそれを含むことを示しており、後半部分の「but made for humans」は、製品が人間の消費を目的としていることを示唆していると判断した。
 審判部によれば、スローガンは、商標法上、商品の出所を示すものというよりも、賛美的広告であり、商標に十分な識別力がなく、商標の長さが消費者にこのスローガンを商標として認識することを妨げるものであるとの判断を示した。これは、EUにおけるスローガン商標が直面している共通の課題でもある。

EU一般裁判所の判決
 Oatlyは、EUの一般裁判所に上訴し、裁判所は1月20日にOatlyを支持する判決を下した。 
 一般裁判所は、「牛乳は人間の消費には適さないという物議を醸し、牛乳が人間のために提供されたものであるという関係者の認識に疑問を投げかけており、このスローガンは、全体として独創的で想像力に富み、逆説的で意外性があり、挑発的且つ予想外のものであるため、商標としての本質的な機能を果たすことができる」との判断を下した。
 つまり、このスローガンは覚えやすく識別性があるので、Oatlyの製品を他社の製品と区別するのに役立つという点で、商標保護の要件を満たしており、このような理由から、裁判所は審判部が誤った判断をしたとして拒絶の決定を取消した。

スローガンの保護
 適切なスローガンはブランドに大きな価値を与えることができるが、保護を得ることは必ずしも容易とは言えず、EUIPOはスローガン商標の保護に対して厳しく、そのような標章は何よりもまず識別力がなくてはならないとしている。
 しかし、Oatly判決で裏付けられたように、記憶に残りやすく、想像力に富んでいて、意外性があったり、言葉遊びであったりするスローガンは、商標として保護されるために必要な識別力の要件を満たしている可能性が高いと考えられる。長期の使用による「後天的な識別性」を有するスローガン(Kit Katの「Have a break」のようなもの)も、この要件を満たすことができるが、この場合、長期の使用による識別性を証明する実質的な証拠が必要となる。

本文は こちら (Oatly slogan succeeds where other plant-based trademark applications have failed)