商標にとって、一般名称になること以上の栄誉はないかもしれない。これ以上に有名になることはかなり難しい。トランポリン、ビデオテープ、ヘロイン、ハゲルスラグ(hagelslag:オランダのチョコレートふりかけ)など、これらの一般名称は、かつては商標登録されていた。商標の所有者だけは、一般名称になることをあまり快く思っていなかったことだろう。
商標の希釈化や一般名称化から商標を守りたいのであれば、第三者による商標の使用に対して断固とした措置を取ることが非常に重要だ。商標に関する紛争で、被疑者が商標は自由に使用できる一般名称になっていると主張することがよくある。「Spa(温泉水)」や「Memory(ゲーム)」も一般名称になったと主張されたものの、両商標ともにとてもよく知られた商標だが決して一般名称にはなっていないとの主張に裁判所が同意した例もある。
フィットネスブランド「SPIN」「SPINNING」を展開する米国のマッド・ドッグ・アスレティックス(Mad Dogg Athletics)社の取り組みが成功するかどうかも注目されている。ペロトン(Peloton)社というアメリカの室内用エクササイズバイクのメーカーは、最近、マッド・ドッグ・アスレティックス社のエクササイズバイクに関する商標「SPIN」と「SPINNING」の取消しを請求した。ペロトン社は、1990年代初頭に登録されたこれらの商標は、世界的なスピニングブームによって一般名称になったと主張している。また、マッド・ドッグ・アスレティックス社は、「差止請求と訴訟といういじめのキャンペーン」を行ったとも非難された。
それに対して、マッド・ドッグ・アスレティックス社は、ペロトン社が商標の取消しを請求したのは、その数週間前にマッド・ドッグ・アスレティックス社がペロトン社に対して行った特許侵害訴訟に対する報復に他ならないと主張し、プレスリリースで、マッド・ドッグ・アスレティックス社が「SPIN」と「SPINNING」という有名なブランドを考案し、世界的なスピニングブームを巻き起こし、何十万人ものスピニングのインストラクターを育てた。その間、それらの商標権は継続的に使用され、ライセンスされ、権利行使されてきたと、商標が一般名称になったことを否定した。
正当な取消請求なのか、それとも法廷闘争における戦術的な動きなのかは不明だが、両社のブランドと製品の宣伝効果が、少なくともこの紛争における間違いなく高額な訴訟費用を上回ることを祈っている。