2021-03-26

韓国:大法院全員合議体判決 – 無効確定前の後登録商標の使用も侵害に該当 - Kim & Chang

商標権侵害訴訟の係属中に被告が後出願しておいた類似の使用標章が、特許庁の審査を経て最終的に登録された場合、登録後の当該標章の使用は果たして先登録商標権の侵害に該当するであろうか? 最近これを肯定する大法院全員合議体判決が出され注目を集めている(大法院2021年3月18日言渡し2018ダ253444判決)。
 
当該判決は、「後出願登録商標を無効にする審決が確定する時まで、後出願登録商標権者が自身の登録商標を使用することは先出願登録商標権に対する侵害にならない」とした既存判決を変更したものである点でも非常に意味深い判決である。


大法院の判断
本件の争点は、先登録商標と類似の後出願商標が登録された場合、少なくとも後登録された後の使用は先登録商標権に対する侵害が否定されるか否かであり、これに対し大法院は次のように判示した。
 
「商標法は、抵触する知識財産権相互間において先出願または先発生権利が優先することを基本原理としていることがわかり、これは商標権の間の抵触関係においてもそのまま適用されると認めるのが妥当である。したがって、商標権者が他人の先出願登録商標と同一・類似の商標の登録を受け、先出願登録商標権者の同意なしに使用したとすれば、後出願登録商標に対する登録無効審決の確定の有無にかかわらず先出願登録商標権に対する侵害が成立する。」
 
さらに大法院は、「特許権と実用新案権、デザイン権の場合、先発明・先創作を通じて産業に寄与した対価としてこれを保護・奨励しようとする制度であるという点で商標権とは保護の趣旨を異にするが、いずれも登録された知識財産権として商標権と類似に取扱い・保護されており、各法律の規定、体系、趣旨から、商標法と同じく抵触する知識財産権相互間において先出願または先発生権利が優先するという基本原理が導き出されるという点で、上のような法理がそのまま適用される。」として、上記法理が特許権、実用新案権およびデザイン権の侵害にも適用されることを明確にした。

これに伴い、大法院は商標権侵害訴訟の係属中に被告側が後出願して登録された商標「図1」(データ復旧専門企業 データファクトリー)(注1) およびその他関連使用標章(図2)を「コンピュータデータ復旧業」に使用することは、「コンピュータソフトウェア、コンピュータプログラム開発業など」を指定して登録された原告の先登録「図3」の商標権を侵害する行為に該当すると判示して損害賠償責任を認めた。

図1
図2
図3

まとめ
今回の判決によって、先登録商標権者は、後登録商標権に対する別途の無効審判の請求なしでも、法院に後登録商標の使用に対する商標権侵害差止および損害賠償を求める訴訟を提起することができるものとみられる。本判決は後登録商標権者が商標権に基づく正当な使用抗弁を提起する場合に、別途の無効審判の提起なしでも商標権侵害を認められることができる道を開き商標権者の負担を軽減させた判決として意味が大きい。今回の判決は今後商標権を含む知財権の侵害に関わる実務に及ぼす影響も大きいと予想されるだけに、同判決の法理が実際にどのように運用されるか、推移を綿密に見守る必要がある。

(注1)これは商標権侵害訴訟の係属中に被告側が防御用に出願した商標で、出願の過程で原告側が異議申立を提起したものの、両標章に共通する「データファクトリー(DATA FACTORY)」部分の識別力が弱いとして非類似が認められ最終的に登録された。