2021-04-20

EU:「PUMA」 対 「PUMA-System」:関連の可能性 - Knijff Trademark Attorneys

 スポーツシューズの有名ブランド、プーマ(PUMA)が欧州で「PUMA-System」の商標登録に異議を申立てた。「PUMA-System」を出願した企業のウェブサイトによると、「PUMA-System」は、多軸プロファイル加工センターをプログラミングするためのソリューション用に使用されているようだ。しかし、「PUMA-System」商標の登録はヘッドホンなど多くの商品・サービスに対しても求められていたが、靴や衣類は含まれていなかった。

有名ブランドの保護
 とはいえ、靴と衣料品のメーカーであるプーマは、「PUMA-System」の使用が自社の著名商標に悪影響を及ぼす可能性があると考え、欧州連合商標理事会規則第8条(5)に基づき異議を申立てた。同条項は、名声を有する商標の保護について具体的に規定しており、同一または類似する商標の登録は、出願されている商品・サービスが、先行する著名な商標の指定する商品・サービスと類似していない場合でも、先行する商標が名声を有しており、かつ、出願商標の正当な理由のない使用は、先行する商標の識別性又は名声を不正に利用するか、又はそれを害する場合には、拒絶される。著名商標の所有者は、既に損害が発生していることを証明する必要はなく、そのような損害が将来的に発生する可能性があることを立証できれば十分である。

 この事件は、最近EUの一般裁判所で審理された。同裁判所は手続き上の問題に加えてプーマのような著名ブランドの保護範囲について声明を発表した。

混同の虞は要件ではない
 欧州連合商標理事会規則第8条(5)の立証に、混同の虞の証明は必須ではない。後願商標と先行する商標が結びつけられ、関連する公衆に後願商標から先行する商標を想起させる可能性があることで十分である。その関連性の可能性は、商標の類似の程度、名声の程度、先行する商標の識別性、商品・サービスの特徴など、すべての状況を考慮して立証されなければならない。商品・サービスの類似性は要件ではないが、逆に、両商標が指定する商品・サービスが全く異なっていて、関連する公衆が出願されている商標を先行する著名商標と関連付ける可能性が非常に低いと思われる場合もある。 

特別な公衆
 この事件がやや複雑なのは、「PUMA-System」商標が多様かつ多くの商品・サービスを指定して出願されていたからだ。当初、「PUMA-System」商標の登録拒絶を求めるプーマの請求は、公衆が問題の標章間に関連性を確立する可能性は低いと考えられたため棄却された。しかし、控訴審では一般の公衆と木材・金属産業の専門家である公衆は区別しなければならないとされた。そして、両者の間にはいくつかの重なりがある。

 スポーツブランドであるプーマは欧州連合域内でとても著名であるため、一般の公衆は商品・サービスの一部について関連性を認識する可能性があった。ヘッドホンや携帯電話などの一部の商品・サービスは、スポーツ活動でも多く使用されるため、その「補完的」な性質が考慮された。
専門家である公衆(本件では木材・金属産業の専門家)は、よく知られたスポーツブランドであるプーマを知っているかもしれないが、機械関連の「PUMA-System」商標を靴メーカーであるプーマの商標と結びつける可能性は低いと考えられた。

ブランド間の関連性
 本件は特殊な事件ではない。以前に、ファッションブランドのプラダとバリ島のホテルである「The Rich Prada」との間で行われた同様の異議申立事件も、プラダは道路保守や採掘サービスなどの全く異なる商品・サービスについて、自社の著名商標と出願商標「The Rich Prada」との間に関連性があることを証明できなかった。
 したがって、先行する(非常に)有名な商標との1つの繋がりや関連性があれば、たとえその商標が異なる商品・サービスについて出願されていたとしても、商標登録を拒絶するのに十分なものとなる。しかし、その繋がりや関連性は当然のことではなく、その商標がどれほど有名であっても、事実に基づいて立証しなければならないし、すべての状況を考慮しなければならない。

 この事件では、商標登録を希望する商品・サービスの慎重な指定の重要性が強調されている。商品・サービスを正しく分類することで、商標権者は多くの問題や手続きを回避することが可能だ。

本文は こちら (PUMA vs. PUMA-System: the likelihood of a link)