2021-04-21

路浩ノーハウ:(中国商標実務)商標検索の重要性について - 北京路浩

 商標検索といえば、権利取得またはリスク回避に非常に重要な作業だと認識している方がいる一方、あまりにも役に立たず、金がかかるだけだと思われる方もいるかもしれない。本文で、弊所の実務経験を踏まえ、商標検索の重要性について説明したいと思う。

●類似先行商標が存在する可能性が高いから、先に商標検索をしよう!
 中国官庁の統計によると、2020年12月まで中国の累計登録商標(有効)は2839万件余りにも達した。従って、新規出願商標に高い識別性および独特なデザインがなければ、類似する先行商標が存在する可能性はかなり高い。従って、出願する前に商標検索によって類似先行商標の有無を確認することはまずステップワン。

●克服できない先行商標があるから、先に商標検索をしよう!
 商標検索を行わずに出願する場合、同一又は類似の先行商標が存在すると、出願商標は拒絶査定されるリスクが高くなる。さらに、当該先行商標に対して異議、不使用審判または無効審判を請求する条件を満たせなければ、拒絶査定を甘受するしかない。こうした場合、コスト面で商標検索より新規出願の費用が高いので、反って損になる。

●先行商標を克服できても、全体なコストが高いから、先に商標検索をしよう!
 「商標検索は主観的な判断の手法および官庁データの遅延などの要素に影響されるので、先に商標検索をしても類似先行商標を検出することはできない可能性がある。商標検索よりは、本当の類似先行商標がはっきりと分かる拒絶査定通知書を受けた後に、それを狙いにして対応策をすればいいんじゃないか」、と思う人が少なくないかもしれない。
 ただし、近年、中国の年間商標出願件数が段々増えており、2020年の商標出願件数が576.1万件にも達した。さらに、近年から行われてきた商標機関改革によって審査期間の短縮が重要な目標の一つである。つまり、審査官の審査プレッシャーがよほど高くなっている。
 結果として、拒絶査定不服審判の際に、審査官は引用商標に対する異議、不使用審判、または無効審決の決定を待たずに不服審判決定を出すケースが多かった。一方、出願人は出願日を保留するために、負けた不服審判に対して行政訴訟を提起することによって、引用商標に関する係争決定を待たざるを得ない。そうなると、予想外にコストが急増してしまう。
 さらに、外国人が中国で訴訟を提起する際に、代表者の身分証明や履歴事項証明などの書類を公証・認証しなければならないので、結局、手続上にも手間がかかってしまう。
 従って、先に商標検索をすれば、潜在的な類似先行商標を把握した上で、出願や先行商標に対する対策などを段取りしたほうが権利の取得により効率的である。

●ビジネス戦略の調整に有利なので、先に商標検索をしよう!
 防御商標、又はコアブランドではない商標を出願する際に、商標検索の結果によって出願を見送るか、検出商標に対して対策を取るかなどの対応調整が可能。
 商標検索で他人による冒認商標を発見することが可能なので、その結果によって出願を見送るか、相手に交渉するか、または相手商標に異議などを請求しながら出願を段取りするかなどのように対応調整できる。

追加説明:
●中国では、日本語文字のカタカナとひらがなが図形として審査されているので、商標検索をする際にも、カタカナとひらがなを図形商標に捉えられている。
●中国での商標検索は官庁検索ではなく、一般的に代理機構により官庁の中国商標サイトおよびその他の有料検索サイトを利用して検索を行う。また、アップロードデータに1-2週間の遅滞がある。
(弁護士・商標代理人 徐 伝梅)

本文は こちら (路浩知財ニュースレター2021年4月号)