レッドブルAG(以下、「レッドブル社」)の「Red Bull(レッドブル)」は、エナジードリンクとして世界的に知られている。インドでもレッドブルは絶大な人気を誇っており、小売店では、a.商標「Red Bull」、b.向かい合った2頭の雄牛を描いたロゴ、c.背景にある太陽、d.青と銀の台形が描かれた飲料の缶、などで簡単に見つけることができる。上記の特徴は、1999年商標法の下で30類と32類などにそれぞれ登録されている。また、この商標はインドにおいて「著名商標」としての地位を獲得している。(ここ を参照)
レッドブル社は、Bakewell Biscuitss社(以下、「Bakewell社」)に対して、商標権侵害およびパッシングオフを理由にデリー高等裁判所に訴訟を提起した。
レッドブル社は、Bakewell社が「Bulls」を「Horse」に置き換えただけで、同一のカラースキームを採用し、青と銀の台形を再現した欺瞞的に類似した標章(図右)を採用し、「Energy candies(エナジーキャンディ)」を販売していると主張し、告発状でBakewell社の商標(FUN2 RED HORSE(図形):出願番号4327842)に「異議を申し立てた」とも述べている。
デリー高等裁判所は、「Red Bull Energy Drink」と「Red Horse Energy candies」という2つの商品が小売店の棚に置かれていた場合、消費者はパッケージの類似性と同一の配色から、「Bakewell’s candies」が「Red Bull Energy Drink」と関連があると信じる可能性が高いと判断した。ここで重要なのは、インドではかなりの人々が英語を読めず、「パッケージ」から商品を購入する傾向があるということだ。
この訴訟の実体的側面を考慮して、裁判所は2021年5月18日、Bakewell社に対しレッドブル社の商標に欺瞞的に類似した標章の使用を禁じる暫定的な差し止め命令を下した。
なお、現在進行中のパンデミックによる制限を考慮して、裁判所は現在、地域検査官(Local Commissioner)への指示は出さず、当分の間、保留としている。