2021-06-03

ロシア:韓国企業初のロシア著名商標登録はいかにして可能であったか - Kim & Chang

最近、韓国の食品メーカーの商標が、韓国企業のブランドとしては初めてロシアで著名商標として登録された。
 
著名商標を保護するための制度は国家ごとに異なるが、ロシアの場合、一般的な商標とは別途に著名商標の“登録”を受けることができる制度を運営している(工業所有権の保護に関するパリ条約第6条の2およびロシア民法第1508条)。現在約200のブランドのみが著名商標として登録されており、日本からも多くの企業がロシアに進出しているにもかかわらず著名商標として登録されている日本ブランドの数は少ないほど、著名商標と認められるための基準は高い。
 
著名商標として登録されるためには、ロシア全域の需要者に商標が知られていて著名であることを、認知度調査をはじめとする多様な証拠とともに立証しなければならず、“希望する著名商標認定日”を特定した申請書を提出しなければならない。著名商標として登録を受けることになると、申請日および登録日にかかわらず当該日付に遡及して著名商標として保護され、商標が使用された商品と類似しない商品・役務にまで商標の保護範囲が拡張される。したがって実際に商標が使用されていない商品・役務を保護するために多区分にわたって商標登録を確保する必要がなく、このような商標権の維持・行使のために商標の不使用を憂慮する必要もなく、一般的な商標登録と異なり別途の更新手続きなしに半永久的に登録が維持されるなどのメリットがある。

株式会社パルド(以下「パルド」)はインスタントラーメン等を製造販売する韓国の食品メーカーとして、四角形の容器が特徴のインスタントラーメン製品「トシラク」(弁当の意)を1991年からロシアで販売してきている。「トシラク」は平らな四角形の形状から持ち運びが容易で、他のラーメン製品に比べてあまり辛くないという理由などから、ロシアに進出して以降、非常に高い人気を博してきた。
 
パルドは「弁当」のキリル文字(ロシア語)表記である「Доширак」を「ラーメン」に対する著名商標として登録を受けるために2019年6月にロシア特許庁に登録申請書を提出したが、ロシア特許庁は「申請対象商標が申請人の商標であると広く知られていない」という理由で登録を拒絶した。パルドの現地化政策によりロシアの「トシラク」製品には「パルド」の表示がないため、ロシアの需要者には「トシラク」がパルドの商標であることがよく知られておらず、ロシア特許庁はこのような事情から「トシラク」が申請人であるパルドの商標として広く知られていないと判断したためであった。
 
しかしパルドはこのようなロシア特許庁の拒絶決定を不服として2019年12月に知識財産権一審法院に行政訴訟を提起し、当事務所および現地代理人の緊密な協業のもと、需要者が商標の権利者が具体的に誰であるかを知っている場合にのみ著名商標と認められることができるのではなく、商標が表象する出所は抽象的なものであれば足りるという法理を展開し、その結果、一審法院はこのようなパルドの主張を受け入れて特許庁の決定を取り消し、差戻しなしに直接著名商標登録を決定する判決を下した。その後、特許庁がこれを不服としたものの、知識財産権二審法院においても一審と同じ判決をし、最終的に2020年12月、連邦大法院でも著名商標として登録されるべき旨の判決が下され、パルドの「Доширак」商標は著名商標として登録されるに至った。
 
このようにロシア特許庁の拒絶を克服して登録に成功した要因としては、現地代理人の努力と当事務所の経験、意思疎通力などが総合的に功を奏したことが考えられ、今回の著名商標登録決定は現地子会社設立等を通した現地化政策を広げロシアに進出している多くの外国企業のブランドが著名商標として登録を受けることができる道を開いたという点で意味があると考えられる。